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2010/06/11(金) 16:31:05.97 ID:mxlagMco
宵の口に入った。
絵の具が少しずつ濃くなるかのように、周囲は次第に闇色へと染められていく。
すなわちダルクの活動時間の到来だった。
というのにダルクは肩を落としたまま、なんとも重たげな足取りで林道を踏み進んでいた。
いつもなら夜間は元気に飛びまわる使い魔のコウモリも、いまは主人を慰めるように肩口にとまっている。
「はぁ……」
十歩ごとに溜め息。
様々な思考の行きつく先の溜め息。
どうせ取り返しがつかないのに、あの時ああしておけばという後悔。
恩人に誤解させるような行為の不埒さ。
やはり闇の住人だったと物語っていたような、あの瞬間のエリアの眼。
完全に誤解を解こうとせず途中で逃げ出したことで、更に強めてしまったであろうエリアの疑惑。
エリアの自分の名を呼ぶ声。
エリアの温かいスープ。
エリアのきわどいミニスカート。
エリアを背負った時の感しょ
「だーっ違う違うっ」
頭をブンブン振り、ディーが驚いて飛び退いた。
(くそ……オレって奴は……)
だって、初めて外の世界で知り合った、自分と同い年くらいの女の子。
しかも可愛いくて優しい女の子。
短い間だったが、彼女と触れ合った鮮烈な記憶はそう簡単にはこすりとれない。
意識したときの回想ばかりが先行して、それがダルクを底無しの自己嫌悪へ落とす。
使い魔が飛来し、再び主人の肩にとまる。
嗚呼、分かってくれるか、ディー。
「そうだな……とにかく後のことは家で考えような……」
体重を預けた杖をつきながらのろのろ進む姿は、さながら精も根も尽きた老人のようだった。
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