527:1[sage saga]
2011/05/27(金) 16:21:52.71 ID:DA0A8mtNo
デュエルモンスターズ・チェス。
人形のようなコマ数種類と、黒と黄土色のチェッカーで出来た12×12マスのボードを使う。
二人のプレイヤーが交互に着手しあう点は本来のチェスと同じだが、その他のルールなどは大きく異なる。
まず手番はターン制で、1ターンは「メインフェイズ1」「バトルフェイズ」「メインフェイズ2」の経過によってカウントされる。
二回に渡るメインフェイズでは「コマの移動」「魔法」「特殊行動」のいずれかが使え、バトルフェイズでは相手のコマを「攻撃」することができる。
メインフェイズでは必ず何らかの行動をしなければならないが、ターンの始めに「攻撃」をした場合に限りメインフェイズ1は強制的にパスされる。
相手のコマを盤上から取り除くには、進路方向にあるコマをどかすのではなく、自分のコマで「攻撃」をして「破壊」する必要がある。
攻撃できる範囲はコマによって違い、自分のコマを攻撃することはできない。また一部のコマは二回攻撃しなければ破壊されない。
そしてこのゲームには、互いのプレイヤーにそれぞれ「アテム」もしくは「ユウギ」と呼ばれるキングに相当するコマが一つある。
ゲームの勝敗はライフ制で、一定数このコマに攻撃を与えることで決着する。
ライフはルールによって決められ、オールドルールは2、スタンダードルールで4、エキスパートルールでは8と設定される。
「ここではスタンダードが主流ですが、異存ありませんか?」
「ああ、どのルールでもいい」
駒を並べ終えると、アウスはボードの脇に置かれていた二つの砂時計を手に取った。
中に入っているキラキラの砂は血のように赤く、砂時計の天辺には月をかたどった細工が乗せられている。
また真ん中の細い部分から天使のような白翼が広がっており、これが一番ダルクの目を引いた。
「それは?」
「ご存知ないのですか?」
「見たことがないな。ここに来たとき皆が使っていたから気になっていたんだ」
「これは制限時間を計るための『命の砂時計』です。もちろんレプリカですが」
「使い方は?」
「ボードの両脇に小さな魔方陣があります。この上に乗せると自動的に盤上にリンクします」
「なるほどな。ゲーム内の着手によって、二つの砂時計がこぼれたり止まったりするというわけか」
「……あなたは今まで、どうやってこのゲームの時間を計ってきたのですか」
「終焉のカウントダウンだ」
「えっ」
砂時計の制限時間は10分と設定された。中の砂が全てなくなると負けだ。
ただし残り時間が30秒を切ると、自動的に30秒分の砂が追加されるようになる。
つまり完全に10分切れ負けではないから、意図的に時間切れを狙うような行為は難しい。
「――では始めましょうか。初期配置でユウギを並べているあなたが先攻です」
「? いやアテムの方だろう?」
「いいえ、少なくともここではユウギ側が先と決まっていますが」
「……ふーん、そうなのか。『ここでは』……か」
ダルクが今まで準じてきたルールでは、闇ユウギとも呼ばれるアテムを並べていた方が常識的に先手だった。
しかしどうやらそれは闇の世界でのルールの話で、こちらの外の世界では表ユウギが先攻らしい。
こんなところで二世界の相違があらわれたのは計算外だった。いきなり出端をくじかれた気分。
ダルクはできれば後攻を取って、相手の出方を窺いたかった。
そのために駒を並べる際にユウギを取ったのだが――どうやら相手も同じ思惑だったらしい。
(これは長期戦になりそうだな)
盤上はもちろん、心理的な駆け引きにおいても。
ダルクは座りなおすようにイスを引いた。
顔を前に近づけたせいで、一瞬アウスがびくりと反応したのにびくりとしてしまった。
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