53:1[sage]
2010/06/11(金) 16:32:40.23 ID:mxlagMco
――
開けた泉から原生林の深部にあるダルクの家までは、そこそこ距離がある。
その間、ダルクは無意識ながら夜の森林浴を体感していた。
無機質な闇の世界に比べ、外の空気は格段に美味しい。
時折ひんやりした風が、ダルクの素肌を気にかけるようになでていく。
鼻腔を詰める木の匂い。
踏みしめる土、枝、落ち葉の、確かな存在を感じさせる反動。
高所を覆う枝葉の心地よいさわめき――。
夜の雰囲気にほどよく調和する虫たちの斉唱――。
顔を上げ、改めて自然に耳を傾ける。
何もないはずの漆黒の中、ウソみたいに色濃く広がっていた神秘の世界。
「自然って素晴らしいな……」
先刻ボロボロになったダルクの心は、家に帰りつくころにはずいぶん癒されていた。
もちろん先刻の一件を忘れたわけではなく、完璧に立ち直るにはまだ遠い。
が、少なくとも一呼吸おけるほどにはリラックスできた。
自然はかくも素晴らしい。
ようやく自分の家に着く。
ああ、不意に吹きかかる風が気持ちいい――。
ダルクは玄関の小さな階段3段を、できるだけゆっくり上り――
「!?」
すぐさま臨戦態勢に入った。
遅れてディーが羽ばたき、警告を知らせる。
「わ、分かってる」
まったく気が付かなかった。
夜の空気に当てられていたせいでもあるが、まさかそんな場所に居るとも思わなかった。
すぐ斜め上、屋根。
明らかな生き物の気配。
屋根の上に誰かいる!!
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