過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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553:1(To be continued.)[sage saga]
2011/06/08(水) 16:07:57.07 ID:llwMLC1Eo


 そのとき、「来たぞ!」の声とともに乱暴にドアが開け放たれた。

「全員動くな!」

 最初に先頭に立って喝をあげたのは、武具に身を包んだ太り気味の兵士だった。
 続いて量産型のような兵卒たちがずかずか押し入り、ホールの入り口はあっという間に物々しい人だかりで埋め尽くされた。
 一人たりとも天使にはみえず、彼らは元々この町にいる治安維持隊のようだ。

「ここに不法賭博の通報が入った! これからお前たち一人一人――」
「まぁ待て」

 強引な番兵の怒声は、店の外から響いた穏やかな声によって遮られた。 
 直後兵士たちは慌てたように端々へと駆け回り、それが収まったときには人垣の真ん中に広い通路が開けられていた。

 店内は一気に静まり返り、階段を下りていく複数の靴音だけが場を支配した。
 言い知れぬ緊迫感。誰もが畏怖するかのように押し黙り、事態の趨勢を見守っていた。
 先の声の主こそ、間違いなく例の天使族だろう。ダルクは身を縮めるようにして入り口の方を睨んだ。

 やがて――ついに彼らは店の中に姿を現した。
 ダルクは身構えていたにも関わらず、目を見開いて息を呑まざるを得なかった。

 白銀に光り輝く鎧マントに身を包んだ、銀髪の好青年。
 屈強な腹筋を露に、白銀の鎧パーツを身に備えた青髪の大男。
 目の覚めるような純白のローブとマントを身に纏った、黒髪の女性。
 そして最後に――その中で一人だけ浮いているような、色あせたコートを身に引っかけた銀髪の女の子。

 彼らを見て、ダルクの本能が危険信号を発した。
 一刻も早くこの場を離れたい衝動に駆られる。
 それは彼らが純正の天使である証拠――。
 
「野暮な風習は好きじゃない。今夜は我々の裁量に任せたまえ」
「は、はっ!」

 銀髪青年の撫でるような声を受け、ガチガチに萎縮する番兵。
 周囲の兵士も直立不動でかしこまっており、彼らとの身分の差は歴然だった。

 先頭に立っていた銀髪青年は、そのまま一人つかつかと前に歩み出ると、ホール内をぐるりと見渡して言った。
 
「さて……私はこの度、臨時的にこの町の治安維持を務めることになった『ライトロード』のパラディン。ジェインという者だが」

 言いながら、彼はカウンターのマスターの方へ目を向けた。
 マスターは何事もないかのように布巾でグラスを拭き続け……それをゆっくり棚の方へ置いた。
 それからやっとジェインの方へ顔を向け、ゆっくりした足取りでカウンター内を移動した。
 大声を出して客に警告を呼びかけたときからは考えられない落ち着きぶり。
 相手にペースを握られないようにするためだ。ダルクは感心すると同時に頼もしく思った。

「……私が当店『チェス・バー』の責任者、ホワイト・シーフですが。これは一体何の騒ぎでしょうかな」

 客が、兵士が、店全体が一体となって、二人の会話に耳をすませた。



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