632:1(To be continued.)[sage saga]
2011/08/24(水) 16:12:49.68 ID:BRARFUX8o
「さてマスター」
ダルクは遠目に驚いた。
なんとあのライトロードのパラディンは、立ち去るどころかカウンター席に着座したのだった。
「何か飲みたい。メニューを」
「ご冗談を」
「冗談ではないさ。通報の件は片付いた。今の私はただの客だ。もっとも」
ジェインは意地の悪い笑みを浮かべたまま、ちらりとホールへと目配せした。
「いつでも治安維持隊としての私に戻ることはできるが」
「ちょっとジェイン」
そこで初めて、今まで黙っていた黒髪のライトロードが口を開いた。
「ここまで付き合うこともないでしょう。引き上げましょう」
「まぁそう言うなライラ。せっかく下界に下りてきたんだ、地酒の一つも楽しむさ」
「まったく酔狂ね。私は帰るわよ」
「どうぞご自由に。帰りは気を付けてな」
ダルクは女性のライトロードが店を出て行くのを見て、なんとなく安心した。
どうやら彼らの、本格的な治安維持の任は終わっているようだ。
「ガロス、君はどうだい? 酒は好きだろう」
「ああ。俺は付き合うぜ」
「では――ライナさんもどうですか? もちろん私が奢らせていただきますが」
がたん。
席を立つ音。
ダルクの視界に、突然テーブルから立ち上がる姿があった。
落としたコインをジェインに拾われた、あのアイルの小剣士だ。
「オ、オイラ帰る」
アイルの小剣士は自分の荷物を取り上げると、ライトロード達を避けるようにそそくさと出口へ向かっていった。
表立って指摘はされなかったものの、やはりギャンブルをしていた一番の候補者だという自覚は強かったらしい。
ライトロードたちが居残ることを知り、その重圧に耐えられなかったのだろう。帰りたがるのも納得だった。
「……俺も帰る」
「あたしも」
何人かが次々と席を立つ。
ライトロードの監視下となれば、必然、彼らが乗り込んでくる以前に賭けていたアンティを成立させるのは難しい。
勝負熱が冷めて白けるのも無理はない話だった。
「……今です」
ダルクはすぐそばのささやきを聞いた。
着席していたアウスが腰を浮かしている。ダルクも頷き、席を立った。
帰り際に目を付けられ、闇の住人であることを悟られては一大事だった。
しかし今なら不自然ではない。この場から目立たず脱出できる絶好のタイミングと言えよう。
ダルクとアウスは二人そろって歩き、出口に向かう客たちに溶け込んでいった。
これでとりあえずは無事に難を逃れた。
――かにみえた。
ライトロードの成員かは定かではない、あの一人だけ浮いた銀髪の女の子。
成り行きでそばの位置にいた、彼女とのすれ違いざまだった。
金属がぶつかりあう、小さな音。
手錠と手錠がこすれた音。
「あ……」
声を出したのは女の子の方だった。
ダルクが思わず「えっ?」と零したときには、すでにその左手首はとらえられていた。
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