過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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680:1(To be continued.)(続きは近日投下予定)[age saga]
2011/09/11(日) 16:10:52.79 ID:3XneW+eEo
 背後からライトロード・ジェインが近づいてくる足音が、ダルクの耳に響く。

(まずい)

 なんてものではない、恐れていた事態の大本命に直面してしまった。
 どうすればいい。最善手は。

 もうなりふり構わず逃げ出すのは無理だ。
 もし、さっきの呼びかけを無視してあと一歩踏み出していたら、間違いなく攻撃されていた。
 それに完全に的をかけられた以上、たとえ店から脱出できてもあとを逃げ切れる自信はない。
 
 ならば戦うか? ここで?
 それこそ無謀だ。場所が狭いし、相手は天敵の光属性。
 ダルクはまだ「光」と真っ向から戦えるだけの魔力は持ち合わせていない。
 加えて、青髪の屈強なライトロードが一人、銀髪の少女が一人。
 少なくともジェインに加勢しそうな相手が2人はいる。
 店を出たライトロードも、もしかしたら外で待ち構えているのかもしれない。
 
 何より気が進まないのは、この店の客、マスターとエルフの姉妹さん、そしてアウスに迷惑をかけてしまうことだ。
 ただでさえ忌み嫌われているらしい闇属性の汚名を、絶対にこれ以上重ねたくはなかった。

 ダルクは、懐の杖の握りをゆるめた。
 使い魔のディーにも待機を合図する。

(闇属性であることを伏せたまま、互いに一切の血を流さず、町の人々に一切の迷惑をかけずに終わらせる)

 この場をしのぐ理想形だ。難しいが、やるしかない。
 ダルクの方針が固まったところで、ジェインの足音が止まった。

「少年、こちらを向きたまえ」

 ダルクは振り向いたが、顔はうつむけたままだった。
 目を合わせたくないこともあったが、光が眩しくてとても目を向けていられないのも事実だった。
 視界の端から幾多の視線を感じる。やはりホールの観衆から注目を浴びているようだ。

 眼前で対峙したジェインからは、相当の圧力を感じた。
 自分と見た目の年齢がそう違わないだろうに、圧倒的な貫禄や偉容を誇っている。
 そして――強い。間違いなく。伊達や出自でその地位にいるわけでもなさそうだった。
 
「ふむ……」
 
 ジェインは顎をなでながら、品定めするかのようにダルクを眺め回した。
 その後で、傍らの少女に尋ねた。

「ライナさん、この少年がどうかしたのですか?」
「えっ?」
「先ほど、彼の手をつかんでいませんでしたか?」
「え。ええっと」

 ダルクは少女に視線を投げる。
 ライナ? この少女の名前はライナというのだろうか。
 ライナ。一度だけその名を聞いた覚えがある。確かあれは……。

「さすがライナさんだ。この少年からは『闇』のにおいがする」

 一瞬で心臓を鷲づかみにされたような感触がダルクを突き抜けた。
 見抜かれた。
 そういう職についている以上、鼻は鋭いのは納得だが、ばれるのが早すぎる――。
 
 そのときぴくりとそばの気配が動いた。地霊使いのアウスだ。
 本来ならダルクなど構わず帰ってもお咎めはないのに、あえて付き合ってくれている。
 ありがたい。ありがとう。窮地に少しだけ心強さを得た気分だった。

「ちっ、違うよっ」
 
 そのとき、さらに予想外のところから助け舟が出された。ライナだ。
 
「この人はなんでもないよっ。うんっ、ボクの勘違いだったみたい!」
「しかし……ライナさんがそう仰っても、我々は彼を改める義務があります」
「どっ、どうしてっ?」
「彼に『闇』の疑いがあるからです」
「だっ、だからこの人はっ」 
「ライナさん、確認するだけです。彼が『闇』でないと分かれば、すぐに解放しますよ」

 その言葉を聞いてライナは、困惑に顔をゆがませ引き下がった。
 さすがに状況を打破するまでに都合のよい助け舟ではなかったようだ。
 やはり自分で何とかするしかない――。



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