過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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2011/09/15(木) 15:25:07.25 ID:yzwl6tpxo

 裏口の小さなドアから、アウスの杖をカギ代わりとし、魔法図書館の中へと入る。
 中といっても、ダルクが想像していたような広大なアトリウムが広がっているわけではなかった。
 階段と廊下ばかりが目に入る、思ったよりずっと手狭な空間。
 アウスによると、図書館に併設された従業員用の宿舎らしい。

「そ、そんなところに部外者を連れこんで大丈夫なのか?」
「もちろんダメです。もしバレたら減給・停職ぐらいは覚悟しなければなりませんね」
「おい、それは」
「大丈夫です。バレるというのは、おおっぴらにという意味です。 
 ここの人たちはみんな隠れて好き勝手やってますからね。
 一人や二人に見られても寛容的に見逃してくれますよ」

 見た目の厳格さとは裏腹に、中で働く職員たちは割かしアバウトのようだ。
 
「ダルク。ここまで来て、なんですが」

 階段の踊り場で、アウスが言いづらそうに歩幅を緩める。

「あなたにはその、今日は屋根裏部屋で寝てもらうことになります」
「えっ?」
「その。私の部屋まではちょっと……」
「あ、ああっ」

 ダルクは一瞬で理解し、急ぎ言葉をつないだ。

「いや、そこまでしなくてもいい! あのライトロードたちが帰る頃合を見計らって、すぐに出て行く!」
「しかし、もう明け方ですが」
「いいんだ。――アウスの目的は分かっているつもりだからな」
「えっ?」

 ダルクは、なぜアウスが自分にここまで親切にしてくれるのか理由を考えていた。
 そして、そうとしか考えられないことに思い当たっていた。

「悪いが、この杖は宿代としても渡すわけにはいかない。大事なものなんだ。だから」
「違いますっ」

 言葉を遮ったアウスの目は、気のせいか鬼気迫るものがあった。

「私はそんなつもりで貴方を連れてきたのではありません!」
「えっ?」
「あ……い、いえ、失礼しました。誤解を、招きそうな発言でしたね」
「い、いや……」
「どうぞ、こちらです」

 いつの間にか二人は、階段を上りきっていた。
 屋根裏部屋へ続く、斜めに傾いた扉がアウスの杖によって開けられる。
 小さな軋みと共に、細かな木くずがパラパラと落ちてきた。

 中は存外広かった。窓がついており、ベッドもある。
 天井が急な傾斜になっているだけで、あとは普通の部屋のようにみえた。
 いや、むしろ質のいい暗闇がある分、ダルクの好みの部屋だ。
 
「少しここでくつろいでいて下さい。私は一旦部屋に戻ります」

 アウスはそう言い残し、ダルクを置いて階段へと引き返していった。

 出入り口の扉がパタンと閉められると、静寂が訪れた。
 一人残されたダルクは、ためらいがちに奥へ進み――おもむろにベッドに腰かけた。
 姿勢がなじんだところで、大きく息を吐く。


「とりあえず……なんとかなったな……」




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