過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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730:>>719〜【1/4】[sage saga]
2011/10/11(火) 16:21:50.57 ID:Yiee1teyo


 ダルクの使い魔の一つ目コウモリは、それは上機嫌にパタパタと飛び回っていた。
 コウモリ――『D・ナポレオン』と呼ばれる闇モンスターのディーは、今日はずっとダルクの窮屈な服の陰に閉じ込められていた。
 それに加え、屋根裏部屋というコウモリ好みの暗所に解放されたおかげで、その喜び様は見ている側まで清々しくなるほどだった。

「屋根裏部屋か」

 ベッドに腰かけたまま、部屋をぐるりと見渡す。
 まだ夜明けの暗がりが空間を支配していたが、ダルクには中の様子が手に取るように分かる。
 思わず埃っぽさを感じさせるような古い木造だが、日頃から使っているのか思いのほか掃除が行き届いている。

 ベッドから少し離れた向こう側の壁に、勉強机のような大きなテーブルと、安定感がありそうなイスが一式。
 脇には、大小さまざまの蔵書が整然と納められている本棚。
 また近辺にあちこち積まれている箱には、杖や武器、その他もろもろの小道具が詰め込まれているようだ。
 書斎付きベッドルームというよりは、隠し部屋の研究室といった印象だ。
 
 こういった部屋をすんなり使用できる権利があるところから、アウスは見た目通りに勉強熱心らしい。
 そういう友人が一人いれば、もしものときは心強いかもしれない。彼女に至ってはチェスも強いし――

(い、いやいや馬鹿な)
 
 この町の忌避の象徴たる『闇』であるダルク。
 アウスに迷惑をかける以外の何者にもなれはしない。
 それにアウスは理知的で、クールさを帯びた美人で……む、胸も大きくて……。
 きっと人気者に違いなかった。ちょっと知り合ったくらいで友人になろうなど、虫が良すぎる気がした。
 
「……」

 ダルクは腰かけた格好から、仰向けにベッドに倒れこんだ。
 天井は、巨大な屋根の一部を裏からみた斜面となっており、壁との境界には板戸の小さな窓があった。
 その窓から見える空は、すでに明色の青。

(……もうこんな時間になっていたのか……)

 厚い雲は見当たらない。じきに日が昇る。
 そうなったらもう、家までの長距離を徒歩で帰るのは無理である。
 下級の闇属性であるダルクは、日照下での長期活動は不可能に近かった。

 ――それに少しまぶたも重くなってきた。
 ここに至るまでに溜まった疲労が、じわじわと全身に染みて広がっていく。
 ふと気を抜けば、ベッドのふわふわに背中から溶け込んでしまいそう――。


 そのとき突然、出入り口の押し戸が開かれた。
 ダルクは慌ててベッドから身を起こし、天井を飛び回っていたディーは一瞬で物陰へと隠れた。

「お待たせしました」
「い、いや。……!」

 自室からこちらへ戻ってきたアウスは上着を脱いでおり、スリムな身体つきが露になっていた。
 すぐ下に着ていたノースリーブのセーターが、今まで曖昧だった彼女の胸部を露骨なまでに浮かばせている。

(お、大)

 アウスは部屋に垂れ下がっていたランプに明かりを点した。幻想的な光が優しく場を照らし出す。
 彼女は「失礼します」とすぐ目の前の木箱に座ると、杖の他に持ち込んできた大きめの布袋をごそごそと漁り始めた。
 
 そこで初めて彼女が、今の今まで丈の短いスパッツを穿いていたことに気付く。
 ミニスカートでもタイトスカートでもない、太もも半ばまで肌にぴっちり張り付いた、漆黒のスパッツ。
 衣服でありながら、艶やかな肉感をむきだしに立体化させ、自然なラインで生足をつなぐ志向の下衣・スパッツ――。
 
(い、意外に大胆な格好するんだな……)

 こんな時間に、まさに一つ屋根の下で男女二人きり。
 スタイル抜群のアウスは、こんなに露出度の高い服装で、ダルクと向かい合って――
 



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