過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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733:【4/4】[sage saga]
2011/10/11(火) 16:27:13.82 ID:Yiee1teyo

 使い魔を自室に追いやったアウスは、少しばかり肩を落として屋根裏部屋に戻った。
 途方に暮れていたダルクに、今しがたの事情をかいつまんで話す。

「――というわけで、私は夕方付き合うことはできません」
「あ、ああ、大丈夫だ。そこまで面倒みてもらうのは申し訳ないくらいだったし」
「いえ私はそんなことは」
「地図さえもらえば十分。ここまで付き合ってくれてありがとうな」

 アウスとしては、本当はもう一度チェスバーに行きたかった。
 昨日の勝負を仕切りなおして再戦し、ダルクとの決着に白黒つけたかった。
 町を案内するというのは、どちらかというと建前で……いや、でもないかもしれなくて……。

「アウス?」

 アウスは「こほん」と咳払いし、床に転がっていた布袋を手に取った。
 中から何かを探り当てると、それをダルクに手渡す。

「どうぞ。あなたにはきっと必要なものだと思います」
「これは?」

 ペンダントだった。
 珠をつなげたヒモの先に細いフレームがついており、美しい漆黒の宝石がはめられている。
 その妖しい輝きを見て、ダルクは瞬時に悟った。

「これは闇のアイテムじゃないか」
「『黒いペンダント』です。あなたに差し上げます」
「い、いや、これ、ここでは貴重なんじゃないか? さすがに貰うのは――」
「いいんです。もうそのアイテムの研究は済みましたから。ちょっと付けてみてください」

 ダルクは少々ためらいながらも、ヒモの両端のフックを首の後ろで繋いだ。
 途端、今はすでに朝なのにも関わらず、身体が闇の中におかれたときの感触を覚えた。
 しかしながら、その闇エネルギーが体外に漏れている感じはしない。
 
「これは……」
「効果があるようですね。ならば頭からフードでも被れば、炎天下でもいくらか活動可能でしょう」
「こ、こんなすごいアイテムを貰うわけには!」
「どうせ闇属性のモンスターにしか効果はないんです。
 それにそのアイテムだって、まともな使い方をされた方が作り手も喜ぶというものでしょう」
「本当にもらっていいのか? ありがとう、助かる!」
「……その代わり……」
「?」

 アウスはゆっくり背を向け、部屋の明かりを消した。
 そのまま出入り口の方へ向かう。
 これから自室で寝て、夕方以降の司書の仕事に備えなければならない。
 
「また――」
「……? あ、ああ、また会おう!」
「……はいっ」

 扉を閉める間際、アウスの眼鏡がベッドの上の少年をとらえた。
 予想以上にピンポイントで視線が交わり、アウスは慌ててふいと目を逸らした。

「ではおやすみなさい、ダルク」
「ああ、おやすみ」

 後味よく扉が閉められる。
 小さな足音が遠ざかるのを聞き、ダルクは猛烈に睡魔に襲われた。
 『黒いペンダント』は体内の光耐性を増幅させるも、疲労そのものに影響は与えないらしい。

 ダルクはブーツを脱ぐと、本格的にベッドに横になった。
 途端に身体が脱力していく。思ったより限界がきていたようだ。

「ディー……おやすみ……」

 視界を占める屋根裏の形もろくに目に残らず、ダルクの意識は深い眠りに沈みこんでいった――。






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