783:【2/4】[sage saga]
2011/11/03(木) 15:55:11.10 ID:RNsB/8vFo
(さて……とりあえず何から買おうかな)
気を取り直し、ずらりと並ぶ店頭の方へ目を向ける。
なにせ一人暮らしを始めたばかりだ。
食料の他にも、後からいろんな生活用品が必要になってくるだろう。
バーニング・ブラッドの時とは違い、この町へは自分の全財産を持ち込んでいる。
距離の都合上、町までは頻繁に来れそうにないので、できれば今回で必要なものは一通り揃えておきたい。
(ふーん……それにしても色んなものが売ってあるんだな……)
今歩いている通りは、どちらかといえば青果や小料理を取り扱っているところが多い。
香ばしい匂いを漂わせるパンや、見たことのないお菓子、小物のお土産なんかもよく目につく。
あまりに物珍しくて、見ているだけで心が浮き上がってくる。はるばるここまで足を運んだ目的を忘れてしまいそうだ。
そうしていい匂いに唾を飲み込み、呼び込みに苦笑しつつ首を振り、群集に流されながら露店を物色していくうちに――
急に店が途切れてしまった。一角の端まで来てしまったのだ。
あとは建物と建物の間に、路地裏へと続くせまい小道が伸びているだけ。
(ここには何もないのか?)
ダルクは何気なく、ひょこっと顔を出して中を覗いてみた。
特に店らしいものはなかった。
ただ、木箱の上に、恍惚の顔でまたたびキャットがおやすみ中であった。
その直後だった。
ダルクは突然、背後から何かに押し出された。
「うわっ!」
「わっわっ!」
その何かはダルクと共ににぎやかな声を上げ、ダルクもろとも路地裏の壁へと倒れこんだ。
ダルクは間一髪で体勢を整え、身体を反転させて背中から壁へぶつかった。
時間差で、その何者かはダルクの胸元へ派手に飛びこんだ。
避けるヒマもなく、ダルクは勢いそのままにクッションとなる。
「うぶっ!」
「いたっ!」
唇に何かがぶつかり、軽く口付けてしまったような感触。
何がぶつかったか? それは銀髪にうもれた白い肌……おでこ。
「ご、ごめんなさいっ!」
その明るいソプラノと、予想外に華奢な体躯を確認し、ダルクは面食らった。
まただ。また、女の子。
慌てて突き放すように距離を取るダルク。
その拍子に、彼女がダルクと同じ様に被っていたフードが、はらりと外れた。
おかっぱの銀髪からピョコンとクセッ毛が飛び出る。最近見たような既視感。
そうして露になった顔を同時に見合わせ、互いに「あ」と呟く。
「キミ、もしかして昨日のっ!」
「ま、まさか……」
ダルクはその顔に覚えがあった。
いや、正確には印象付けられていたといった方が正しいかもしれない。
何せ昨晩はこの女の子に、ずっと謎めいたマークをされていたのだから。
「クルダ! 地霊使いのクルダでしょっ?」
その少女は、幼い子供のように屈託のない笑顔を向けた。
間違いなかった。
彼女は昨日、ライトロードたちと一緒に行動していた銀髪の女の子――ライナだった。
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