786:【4/4】[sage saga]
2011/11/03(木) 16:07:52.93 ID:RNsB/8vFo
ライナがこの路地裏で偶然ダルクと衝突したのも、まったくの偶然。
自身を探しにきたライトロードを撒くために、慌てて隠れようとしたためだったらしい。
「……事情は分かった。二人でいた方が、追っ手の目をくらませやすいってことか」
「そうそうっ。ね、おねがいっ」
「でも……悪いがオレはまだここの買い物に慣れていないし、自分のことだけで手一杯なんだ」
「あれっ、クルダってここに来たばかりなの?」
「ああ。まぁ、というわけでエスコート役なら他を当たってくれ」
やはりダルクは気乗りしなかった。
何かの弾みで闇属性であることがバレてしまったら、当然ただでは済まないだろう。
余計なリスクに気を取られているうちに、日が暮れて店が閉まってしまうかもしれない……。
ところが、「じゃあな」と立ち去ろうとした刹那、またしてもしつこく腕をつかまれてしまった。
「ボク、一緒についてくだけだよっ。邪魔はしないからっ!」
「な、なんでオレなんだ?」
「信用できるからっ」
ライナは今までと変わらない、あどけない笑顔で言った。
「だって、闇に対抗する研究をしてるんでしょっ? 悪い人のはずがないよっ!」
ダルクはじくりと胸の奥が痛んだ。
やはりこの女の子も、光属性である以上は自分と敵対する立場にある。
この出会いはまやかし。例えどれだけ親しくなろうとも、いつかは――。
「ねっ、ほらいこっ」
そんな想いは露知らず、ライナは楽しそうにいきなりダルクの背中を押した。
すっかり油断していたダルクは、あっという間にぐいぐい表通りまで押し出されてしまう。
「うわっ、と、ちょっと、おい待てっ」
二人して突然通りに出たものだから、案の定通行人にぶつかりそうになる。
しかも運悪く、その相手は体格のいい虎面の獣戦士だった。
「あっくそ、殺されたいがー!?」
「わっ、ご、ごめんなさい!」
ライナは慌ててダルクの片腕に寄り添った。
獣戦士は肩をいからせて凄むと、得物を担ぎなおして去っていった。
ぴったり密着したままの二人。
ダルクは、少年のような口調のせいでいままで少し錯覚していたが――
腕に押し付けられたその感触のお陰で、改めてライナが女の子であることを思い知らされた。
「お、おい……」
「えへへ」
ライナは片手で頭にフードを被せながら、照れくさそうにダルクに笑いかけた。
笑顔。
無邪気な。天真爛漫の。どこか子供っぽい。こちらも釣られて笑いたくなるような。
「いこっ」
ダルクは一瞬、胸が締めつけられたような気がした。
それが彼女の笑顔に魅了されたせいか、後ろめたい罪悪感のせいなのかは分からなかった。
「……し、仕方ないな」
何にせよ、もうこうなってはライナを無下に振りほどくわけにもいかなかった。
こうして、フードで顔を隠した奇妙な男女の買い物は始まった。
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