過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
1- 20
819:【3/3】[age saga]
2011/11/12(土) 16:27:43.86 ID:Sfrte8hBo
 市場を離れた町の広場に、フードに頭を隠した二人組がいた。
 町の子供たちが楽しそうに遊んでいる風景に紛れ、並んでベンチに座っている。
 
 大量の荷物を脇に置き、二人してハンバーガーを食べている霊術使い。
 その様はちぐはぐで浮いており、しかもこんなに広い場所なので、いつ追っ手に見つかるとも知れない状態。
 
「おいしいねっ、このハンバーガー!」
「ああ」
 
 ライナは宣伝に起用できそうなくらい、心底美味しそうにハンバーガーを頬張っていた。
 ダルクももちろん、空かせたお腹にできたてハンバーガーという、究極の味わいに感動していた。
 バンズから始まる香ばしい口当たり……少し固めのレタスのしゃっきり歯ごたえ……
 瑞々しいハーモニーを呼び込む新鮮なトマト……そして口いっぱいに蕩ける弾けるような肉汁……
 
 だがライナと違い、ダルクは思考がハンバーガーに定まらずにいた。
 ライトロードに対する周囲への警戒もそうだが、なにより――。
 
「ライナ」
「ふぇっ?」
 
 口元がケチャップにまみれたライナが、きょとんと顔をあげる。
 それを指摘すると、ライナは慌てて片手で口を覆った。
 
「なぁにっ?」
「……ライナはいま、どれだけお金を持っているんだ?」
「えっ? ええっと」
 
 ダルクが止める間もなく、ライナは懐から札束を取り出す。
 
「えーっとこれだけ」
「ば、ばか、こんなところで見せびらかすな!」
「えっとねぇ。ごぉ、ろく、なな……」
「だから隠せって!」
 
 この無用心っぷり。
 加えて、本物だったら手が切れそうなほどの厚い札束。
 念のため、ダルクは「本当にお前のお金なのか?」と確かめる。
 
「うんっ、ほんとにボクのポケットマネーだよっ!」
「し、信じられないな。一介の霊使いなんだろう?」
「そんなの関係ないよぉっ」
 
 低級の魔法使い族にもかかわらず、相当の身分を感じさせるライナ。
 ダルクは手に持ったハンバーガーを口に当てると、目を逸らし、声をひそめて言った。
 
「ライナ。お前は一体、何者なんだ?」
「……」
 
 これまでダルクの問いかけには全て即答してきたライナが、ここにきて初めて返答をつまらせた。
 ダルクが思わずライナの顔を見ると――ライナは目を合わせないまま、笑っていた。
 
「ふふっ」
 
 ライナは食べ終わったハンバーガーの包みを丸めると、勢いをつけてベンチから立ち上がった。
 
「ひみつっ」
「お、おいっ」
「ねっ、まだ時間あるし、もう一回りしよっ」
「うわっ、ちょっ、待てっ」

 荷物を勝手に手に取り、ベンチを離れていくライナ。
 ダルクはまだ食べ終わってないハンバーガーを、無理に口に詰め込まざるを得なかった。
 
 
 
 広場の片隅。
 そんな二人の霊術使いを、始終眺めていた影があった。
 その影は静かに笑ったかのように蠢くと、音もなく夕陽の影に溶け込んでいった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/501.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice