過去ログ - 闇霊使いダルク「恋人か……」
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830:【1/3】[sage saga]
2011/11/15(火) 16:21:21.65 ID:JACVr1Iio

 二人はハンバーガーを食べた広場から市場には戻らず、別方向の街路を進んでいた。
 ライナは最後に一回りすると言ったが、当然ながらアテなどなかったようだ。
 とりあえず足の向くまま気の向くまま、適当に町の見物がしたかっただけ。
 異郷育ちには見るもの触るもの全てが珍しいのだろう。
 もっともそれはダルクも同じで、例えライナがいなくとも町巡りはやぶさかではない。
 
 ライナは相変わらず、ダルクの腕あたりをつかむように付きまとっていた。
 いくら言っても笑ってごまかし、結局放してくれないので、ダルクはいい加減慣れてしまっていた。
 
(なぜこの娘は、自分にここまで懐くのだろう?)
 
 ダルクは思う。
 ライナのスキンシップは度が過ぎている。
 ダルクは彼女に「闇に対抗する研究者」と名乗ったが、それを証明するものは何一つない。
 なのに――いや仮に証明できたとしても――ここまで無防備をさらけ出せるものなのだろうか?
 
 なにせ彼女とはほとんど初対面のようなもので、ほんの数時間前まで赤の他人も同然だった。
 それが今や、長らく離れていた恋人とやっと再会したかのごとく、ぴったりと寄り添っている。
 ダルクが今まで出会った女の子たちには、こんな節はなかった。
 (もっとも一人だけ、何を考えてるか分からない娘がいたが。)
 
 ダルクが推測するに、ライナは極度に人懐っこい性格のようだった。
 ライトロードの隠れ蓑のためなら、安全とさえ判断できれば、例え相手が昨日今日の知り合いでも構わない。
 要するに別にダルクに限った言動ではなく、誰彼構わずすぐに抱きつける気質なのだ。
 
 根拠はないが、もしそうだったとしても、残念な気持ちになることはない。
 いやそれどころか、逆に感謝しなければならないだろう。
 こうして明るく可愛い女の子と同伴して買い物ができるという、
 人生で二度はないような貴重な体験を楽しませてもらっているのだから――。
 
 
 
「ねっ、ねっ、そういえばさっ」
 
 ふと、当のライナがダルクに語りかけてきた。
 今歩いている通りは比較的人通りも少なく、歩きながらでの会話もしやすい。
 
「なんだ?」
「地霊使い、なんだよねっ?」
「ああ」
「使い魔とか、いるんでしょっ? どんなのっ?」
「どんなのって……」

 「なんなら今見せてやろうか」と、懐で眠っているD・ナポレオンを出すわけにはいかない。
 今が夜なら何とか言い訳もできるだろうが、夕方の今はさすがにディーが闇属性であることがバレてしまう。
 
「別に、普通の地属性モンスターだよ」
「かわいいっ? 見せて見せてっ!」
「い、今はすぐには呼べないんだ」

 この流れはまずいと悟ったダルクは、素早く質問を投げ返した。

「そういうライナの使い魔はどうなんだ? 今は連れてないみたいだけど」
「えっ? ええっと……ハッピーは……」
 
 ライナはどことなく気まずそうに口ごもる。
 ダルクは彼女の使い魔の名が『ハッピー』と知り、明るい主人にぴったりの名前だなと思った。
 
「ハッピーは……ライトロードのヒト達のところにいる……」
「そうか……」

 ライナの気持ちが察せられる。
 いわばライトロード達に、使い魔を人質に取られているようなもの。
 ライナは使い魔のために、何があろうと必ずいつかは戻らなければならない。
 おそらくは、鳥かごのような束縛された空間に……。
 
「!」
 
 そのとき二人は同時に、前方に眩むような光を感じ取った。
 噂をすればだ。
 そこには記憶に新しい、ライトロードのパラディンが足早に歩いていた。
 その後ろに昨晩一緒に酒場にいた、女性のライトロードもくっついている。

「ジェインさんとライラさんだっ」



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