831:【2/3】[sage saga]
2011/11/15(火) 16:21:57.73 ID:JACVr1Iio
ライトロードの二人はまだこちらに気づいていないが、このままだと急接近してしまう。
しかしいきなり踵を返すのも目を引いてしまうかもしれないと、ダルクが逡巡した瞬間。
「こっち!」
突然ライナがダルクの手を取り、無謀にも全力で脇道へと走り出した。
「うわっ! お、おいっ!」
ダルクはいきなり引っ張られ、ずっこけそうになった。
体勢を整える流れで、自然に一緒に走る形になってしまう。
こうと決めたら迷わず突っ走る、それが光霊使いライナ。ダルクは頭を抱えたい気分だった。
ダルクはせめてライトロード達に気付かれなかったことを祈りつつ、重い荷物で音を立てながら駆けていった。
先頭を突っ切るライナは、カドに差しかかるたびに右へ左へジグザグに折れ曲がっていく。
ちゃんと道筋は覚えているのだろうかとダルクは不安に思ったが、すぐに不安がるだけ無駄だと悟った。
「はぁっ……はぁっ……ここ、どこだろっ……?」
やっと適当な場所で立ち止まったとき、ライナは案の定、辺りをきょろきょろし始めた。
よくも悪くも積極的なのが彼女の売りらしい。
ダルクは喘息患者のように、露骨にぜいぜい息切れを起こしていた。
無理もない、重い荷を負ったまま、手ぶらのライナと同じ速度で走らされていたのだから。
「つ、疲れた……」
ダルクは両膝に手をつき、ひたすら肩を上下に揺らしていた。
汗がぽたぽたと地面にしたたり落ちていく。
地面……土だ。舗装された石畳ではない。
ダルクは顔を上げ、改めて周囲を見渡した。
路地裏の広場、とでも呼ぶべき場所だった。
それも、闇の世界で見慣れたような寂れた場所。
狭い道が入り組んでおり、壁にはボロボロの落書き、建物の隅には放置されたゴミ溜まり。
喧騒から遠ざかった、退廃的な空間……スラム街。
人通りはなくはないが、あまり長居したくない場所だ。
特にライナのような、能天気なおのぼりさんには危険を伴う可能性もある。
ダルクはまだ整っていない呼吸もそこそこに、ライナの手を引き寄せた。
「えっ? な、何っ?」
「広場まで戻ろう。ここには長く居ないほうがいい」
「そうなのっ? どうしてっ?」
「治安が良さそうに見えないからだ。それに、さっきのが追ってきている」
「えっ!? ジェインさんたちがっ!?」
「いや、そっちじゃなくて」
直後、ダルク達にかけよる複数の姿があった。
反射的に、懐の杖に手を伸ばすダルク。
同時にライナの前に一歩踏み出す。
何が起きようと、絶対にライナが傷つくようなことがあってはならない――。
「荷物が多いねえ、兄ちゃん」
「武器は? 武器は?」
しかし相手は背が低い……子供だった。二人組。
一人は、短いシルクハットにサングラス、トレンチコートといったハードボイルドな少年。
もう一人は、大きなボロ布にすっかり全身を隠した、正体不明の何か。
さきほどの声からして、辛うじて少年であることが分かる。
「ちょいとそのバッグの中身、見せてくれよぉ」
「武器。武器が欲しい」
二人はあれよという間に、ダルクの荷物にまとわりつき始める。
「ば、ばか、やめろっ。ちょっとライナ、手伝ってくれ!」
「ふふっ、かわいいねぇっ」
「ち、違う! こいつらはそんなんじゃない!」
「なぁいいだろぉ、少しくらい見せてくれよぉ」
「武器。武器をよこせ」
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