880:>>859〜【1/3】[sage saga]
2011/11/22(火) 16:21:48.97 ID:vBjcwSeqo
  
  ダルクはとっさの思いつきで、首にかけていた『闇のペンダント』を傷口に当てて押さえつけていた。 
  思った通りペンダントの闇エネルギーが光の霊力と相殺され、わずかながら激痛が緩和されていく。 
  ダルクの叫び声は次第に呻き声へと変わり、やがて歯を食いしばることで騒ぎは収まった。 
  しかし―― 
   
 (ラ、ライトロードか……) 
   
  ダルクは肩口を鷲づかみし、壁に寄りかかるような姿勢で苦しげに顔を上げた。 
  二つの眩しい光。あの甲冑には見覚えがある。昨晩バーで、ダルクの身を改めたパラディンだ。 
   
 (まずい……) 
   
  ダルクは状況の悪さに、そして頭を振り回すような疼きに奥歯をかみしめた。 
  荒い呼吸も絶え絶えに、ライトロード達からじりじりと距離を離そうとする。 
  しかし身体が思うように動かない。 
  あまりの痛みに足がもつれ、直立も維持できない。 
   
  光霊術を受けてこのような状態になったと知られれば、もはや正体の暴露は免れない。 
  どこか鈍感なライナはともかく、経験に長けていそうなライトロード達はごまかしきれないだろう。 
  無理にでも逃走を図らなければならないのに――身体が重過ぎる。 
   
 「……なるほど、すると彼は光霊術をかけてああなったのですね」 
   
  ライトロードのジェインはライナの話を聞きながらも、よろよろのダルクに注意深く目を光らせていた。 
  その片手は腰にさげた剣の柄を握っており、ダルクの動き次第ではいつでも抜き放てる格好である。 
   
 「ボ、ボク、いつもの『チェーン・ヒーリング』をかけただけなのにっ、こんなっ、こんなっ……」 
 「えっ? ということは……」 
  
  ライトロードのマジシャン・ライラは、遅れての到着ゆえにまるきり状況が把握できていなかったが、 
  とにかく目の前の少年の惨状が光霊術によって引き起こされたものと知るなり、不安げに顔をしかめた。 
  
 「ご安心を。この世にライナさんの回復霊術で癒されないものなどありませんよ」 
   
  ジェインは言うなり、つかつかとダルクに近寄った。 
  そして尚も距離を取ろうとするダルクのフードをつかみあげ、乱暴気味に引っ張りあげた。 
   
 「『闇』の徒を除いては!」 
   
  そのまま道の中央、ライナの眼前にダルクを放り出す。 
  まともな受け身もできず、ダルクは横向きにどさりと倒れこんだ。 
   
 「うぐっ」 
 「ちょっ、ちょっとジェインさんそんな乱暴に」 
 「ライナさん、よく聞いてください。この少年は間違いなく、『闇』です」 
 「えっ? ……えっ? 『闇』って……なに言ってるのっ?」 
  
  まるで頭になかった言葉に動転したライナは、隣にいた女性のライトロードに救いを求めた。 
  すがるような視線を送られたマジシャン・ライラは、しかし力なく首を振る。 
   
 「光と闇は、最も相反する組み合わせよ。両者の技や魔法は、お互いに悪影響しか与えないの」 
 「そっ、そんなっ……でっ、でもクルダは地霊使いだって……」 
 「すべては方便だったのです。思えば酒場で会った時、彼は何ひとつ地属性の証拠を持っていなかった」 
  
  ジェインは冷めた目で、いまだ苦しそうに傷口を抱えるダルクを見下ろした。 
   
 「危ないところでした。おそらく、何も知らないライナさんを日が落ちるまで連れ回し、 
  自分の時間である夜が訪れたとき……存分に、悪巧みをはたらく腹だったのでしょう」 
   
  おもむろに剣の鞘から、金属がこする音とともに刀身が導き出される。 
   
 「我々をたばかり、我が姫君をかどかわし、考えるもおぞましい悪事を働こうとした罪……」 
   
  ダルクの頭上に、冷たく輝く刃の切っ先がゆるやかに向けられた。 
   
 「極刑に値する」 
1002Res/501.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 
板[3] 1-[1] l20 
	このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
	もう書き込みできません。