881:【2/3】[sage saga]
2011/11/22(火) 16:22:29.84 ID:vBjcwSeqo
「違うっ、違うよっ!」
ライナはたまらず、ダルクをかばうように二人の間に割って入った。
「逆なのっ、この人はボクを守ってくれたんだよっ!」
「守る?」
「ボクが悪い人たちにお金を盗られそうになったのを、傷ついてまで守ってくれたのっ!」
「ああ、そういうことでしたら話は簡単です。この少年とその窃盗犯はグルだった。
ライナさんの信用を得るためなら、どんな芝居も打ちますよ。いかにも『闇』が考えそうなことだ」
「そんなはずないっ、ねえクルダっ、クルダも何か言ってよっ!」
ライナはダルクを揺さぶろうとしたが、まだ痛みに苦しむその様子をみて手を引っ込める。
手付かずでおろおろするライナ。様子を見守るライラ。無表情でいったん剣をそらすジェイン。
そして、倒れたまま片手でフードを被りなおし、よろよろと上体を起こすダルク。
「……そうだな」
ダルクは自嘲気味に笑った。
「その呼び方はやめてくれ。オレの名前は『クルダ』じゃない」
「あっ……えっ?」
「今までだまして済まなかった。オレは『闇』属性だ」
「!」
「でも」
『闇のペンダント』を傷口に当てていたおかげで、ずいぶん痛みも引いていた。
ダルクは弱々しく足を踏みしめ、ゆっくりと立ち上がった。
目の前のライナを、やさしく脇へ押しのける。
「ライナに悪事をはたらく、なんて気は最初から全くなかった。誓ってだ」
「闇の分際で、何に誓うというのだ。邪神か? 地縛神か?」
ジェインが少しイラついた口調で問いただす。
さりげなくダルクがライナを呼び捨てにしたことが、しゃくに触っていた。
「誓うのは……オレ自身の存在にだ。この身に流れる血、矜持、すべてに」
「ハッ、話にならない。一介の『闇』風情の誓いに意味などあるものか」
ダルクはジェインの顔を見据えた。攻撃的な光に目が眩む。
しかしダルクは面と向かって言わずにはいられなかった。
「では、何かに『誓う』と添えたところで、真実が変わるのか?
ただ一つの真実そのものは、捻じ曲がったり歪んだりはしないだろう。
自分の抱く真実を『誓う』なら、何も後ろ盾は必要ない。自分ただひとりで十分だ」
直後剣が振られ、ぴたりとダルクの眼前に止まった。
ジェインはほぼ無表情だったが、ダルクはその顔にこれまでにない怒りを感じた。
「今のは我らの神を冒涜する発言だ」
「そういう形になってしまったのなら謝る。だが、訂正はしない」
「ならばライトロード・パラディンの名において、お前を断罪しなければならない」
「オレは何も罪を被るようなことはしていない!」
「つまらない遺言になったな!」
「やめてっ!!」
ジェインの剣が空を舞うと同時に、大手を上げたライナがダルクの前に躍り出た。
懐の杖を握りしめていたダルクは、ジェインとともに動きを止める。
「ジェインさん、お願い、やめてっ!」
「ライナさん、どいてください」
「いやっ! 絶対どかないっ!」
「私はただ、光の使命を全うしようとしているだけです」
「使命って何っ? この人を傷つけることが使命なのっ?」
「ライナさん……彼は『闇』なのです。あなたも危険な目に遭うところだったのですよ」
「でもっ、ボクだって『闇』なんて大嫌いだけど、ボクは、この人といて、楽しかったっ!
後で何かされるとしても……今のこの人は、まだボクを守ってくれた恩人なのっ」
ダルクは目の前のライナの背中を見て、彼女の名を呟いた。
胸の奥がじわじわと熱くなっていくのを感じる。
「お願いジェインさんっ、どうか今回だけは見逃してあげてっ」
「しかし」
「ボク、この埋め合わせはきっとするから……お願いっ!」
「そうよジェイン、その子にはたぶん害意はなかったと思うわ」
その時、今までなりを潜めていたライラが口を挟んだ。
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