過去ログ - 澪「好きだよ。………好きだった」
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48:気に入りません ◆EXypm9zea.
2010/06/05(土) 19:59:28.15 ID:UOxdl6DO
唯のことは頭の片隅にあったし、どうしてそんなことをしたのか明確に説明するのは難しいけれど。
震える梓の手を取って、私はその唇にキスをしていた。

―――そこにただ、黒髪だけが揺れている。

そのキスは空虚なものだった。
純粋な後輩の気持ちをいたずらに高ぶらせるだけだった。
梓にとっては、思いがけない幸福だったらしく、私の手を強く握ってきた。
最後に、触れたその唇に舌を這わせて、離れた。

舌を絡めるような深いキスをしたわけでもないのに、梓の瞳は濡れて艶めき、息はあがっていた。
こちらから腰を屈めてしたのに、いつのまにか梓は爪先立ちだった。

「せん、ぱい……」

「びっくりさせたな。ごめん」

「いえ。その、私は後輩ですから」

俯いて、消え入りそうな声で梓は言った。

「もっと、先輩から……教えて欲しいです」

「……おねだり上手、って言われるだろ」

「みっ、澪先輩!」

「はは、冗談だよ。梓」

後輩の頭をくしゃくしゃ撫でていると、考えなくてはいけないことが消えていった。
一言も好きだなんて言わなかったのに、梓はこのキスを告白に対する返事だと受け取ったらしい。
何も考えていないようで、私は梓がそうすることを卑しく打算したのかもしれなかった。
また一つ嫌いな自分を発見して、それを数えた。


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