過去ログ - 一方通行「打ち止めが高校に入学すンだが……」
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344:101 [sage]
2011/03/27(日) 12:27:14.17 ID:SnwljrHx0



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 御坂美琴は、新たに購入した水着の入った袋を胸に抱えて一人歩いていた。
 『妹達』との攻防で上条当麻と出かけるということを掴むと、打ち止めに頼み込んで同行を許可してもらった。妹達は騒いでいたが、打ち止め曰く、『ヒーローさん争奪戦に関してミサカは一応中立だから…』とのことである。
 一方通行に関しては、打ち止めが頼み込めば恐らく簡単に許可してくれるだろうと美琴は踏んでいる。


 正直言って、美琴は未だに一方通行のことが許せてはいないし、打ち止めが彼に懐いているということ自体信じがたい思いでいる。彼女と一方通行の仲は、できればお互いに関わりあいたくはない仲、である。
 彼女にとってみれば、学園都市第一位は、あくまでも上条当麻がピリオドを打つまで、10031人の『妹達(ミサカミコト)』を殺してきた人間なのだ。
 笑いながら、圧倒的な力で、10031人の人間を惨殺してきた殺人快楽主義者としか思えない。だからこそ、打ち止めの語る「望まぬ実験だった」と言う説明は、到底彼女の理解できるものではなかった。


 しかし――美琴は知らなかった。 
 『最終信号』という個体が新たに製造されて、生き残った9969人の『妹達』が、殺人兵器になる可能性があったこと。
 最終信号とミサカネットワークを使って、巨大な陰謀が動いていたこと。
 第三次製造計画という、新たな実験が進んでいたこと。
 そしてそういった事象全てを、あの学園都市第一位がその身を削って食い止めてきたこと。

 自分とクローンをめぐるモノ全ては、あの夏の日に終ったと考えていた美琴は、後にその事実を知り己の無知と浅さを思い知らされた。
 『残骸(レムナント)』を片付けて(それも最終的な始末は第一位がつけたらしいが)、もう大丈夫と安穏と暮らしてきた自分はいったい何をやってきたのだろうと、美琴は己の甘さを悔いた。
 世界は広く、そして深い。中学生だった美琴は、そのほんの一端を垣間見たに過ぎなかった。それなのに、全てを見たと錯覚してしまっていた。

 その彼女の知らない世界の中で、苦しむ彼女のクローンを救ってきたのが一方通行だった。
 [ピーーー]のを止めたものが、殺されてきたものの危機を知らず、殺してきたものが、殺されてきたものを救った。「私だって知っていれば止めた」というif――あるいは言い訳――など、甘ったる過ぎて吐き気がする。


 こうしてここに、美琴と第一位と、そして一万人近い彼女のクローンをめぐる微妙な関係が成立しているのである。



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