957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/05(土) 04:10:56.62 ID:j60amTETP
ロンドンの空に、また、光が拡がっていく
原因は、天に並ぶイギリスの天使とローマ正教の天使のぶつかり合いである。しかし、それは多くの人には気付かない
丁度、人払いの術式の影響下であるかのように。市民たちが気付くことなど殆ど無い。彼らにとっては観光客がシャッターで写真を取っている様なもの。生活の一部程度にしか知覚しないのだ
最近利き腕を失ったばかりであり、この天使たちの戦いの原因の片棒でもある女性は午後のゆったりとした時間を、笑みを浮かべながら過ごしていた
彼女の居る場所はロンドン塔
英国の象徴でもあるこの場所で彼女の目の前には、複数のワタリガラスの死体と風船の様な薄黄色く光る球があった
ここで飼育されているワタリガラスは残り一匹だった
そしてその残った一匹は、本来ならば気性の荒いこの種類の鳥であるが、彼女の肩に乗り、くちばしで自らの体を整えている
左手で、彼女がその鳥の首元を撫でると、ワタリガラスの首に首輪を思わせる白い模様が浮かび、そしてロンドンの空へ飛び去って行く
彼女はそれを見送りながら、目の前に浮かぶ1m弱程度の球を撫でた。フッと人の顔の様なものが表面に浮かび、右腕が球から生える
その右手が何かを掴むように拳を作ると、攻撃対象を失った英国の守護者が、バチカンのミカエルという十字教だけの存在ではなく、十字教の天使に国家の存在である獅子と一角獣を混ぜ込んだ動物的なフォルムをしている守護天使が、その姿を薄くしていき、完全に消え去った
彼女が振り向いてその場所を離れようとすると、彼女の胸元の十字の中央にその球は吸いこまれていく
ローラ(ここまでは、計画通りなるのよ。そして、恐らくこれからも)
胸元の十字を手の平にのせ、彼女はそこに視線を落とした
ローラ(……だが、)
立ち止まり、一転、僅かに憂いの表情を作る
ローラ(この術式にも不完全性がありけるのよね。しかも原因は、術式そのものでなく、信仰そのものにありたるのであろう)
ローラ(まぁ、それでも構わぬわね。今のところはそれで支障も無きたることだし。下手に術式に手を加えては、間違いなく、今後に障るわ)
ローラ(そんなことで、私の切り札を失いたる訳にはいかない。それに、この術式そのものもアレがあって初めて完全と言える)
ローラ(焦る必要など何も無きよ。イギリスの不幸が本格的に始まるのはこの後なのだから)
彼女は表情を戻すし、怪しげな笑みを浮かべる
現状でも十分ではあるのだ。対ローマと言う面でも、それ以外の敵となろう相手にも
ふと、塔の窓から天を、太陽を見た
ローラ(そろそろ時間であるわね。前の戦いで世話になった国を、前の戦いで敵だった者達と共に襲いたることになろうとは、時勢でありけしものよな)
言って、彼女はロンドン塔を後にした。ここに、もう用は無い
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