670:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/03/02(水) 15:51:49.61 ID:mnu8E9pc0
人間の十倍の大きさのある機動兵器ならば、一歩で十メートル弱進むことができる。
慎重に足を前に出し続けて、二十五歩。そこでシノは止まってドラグナーを降りた。
シノ「あれがオアシスか……」
コロニー住まいのシノには、砂漠もオアシスも初体験である。
灼熱を長い黒髪が吸収して火傷しそうだと思う。
シノは備蓄されている擬装の服とフードのついた外套を被り、ドラグナーには機体を隠す保護シートを被せて砂漠を歩いてオアシスに向かった。
シノ「よかった……人が何人がいるみたいだな」
途中、何度も足を取られてシノは平坦な道を踏むことができた。
今まで最も長い300メートルだった。
シノ「あの、すみません」
看板の下がっている建物に入った。
オアシスを訪れる旅人を癒す酒場のようだったが、戦争の影響か、中には店主以外の誰もいない。
店主「あいよ。こんな時間に客とは珍しいね」
シノ「あの、水をいただけませんか?」
店主「あいよ」
返事をしたが、店主はカウンターにある水のサーバーに向かおうとはせず、シノに手のひらを上向かせて差し出した。
シノ「えっ……?」
店主「お金だよ、お金。払ってもらわなくちゃ。今じゃ水でさえ貴重なんだ」
シノ「で、でも、ここはオアシスで水があるんじゃ……」
店主はギロリと目を光らせた。シノがびくっと肩を震わせると、店主は低い声で言った。
店主「あんた、地球の人じゃないね。コロニーの人だ」
シノ「ど、どうしてそんなこと……」
店主「そんな白い肌と喋り方じゃ、地球生まれだって言われても無理だよ。教えてあげるよ。オアシスの水は戦争のせいで生じゃ飲めなくなっちまったんだ。一度、オデッサに預けて浄水してもらってるんだ。それも法外な値段でね」
シノ「そうだったんですか……申し訳ありません」
店主「まあ、いいさ。一杯、ごちそうしてあげるよ」
シノ「い、いえ、ちゃんとお金は払います。少しですけど、持ってますから」
服と一緒に僅かだが金はある。それを取り出そうとする間にも店主は穏やかな口調になって、サーバーから水を汲む。
店主「わかったよ。そこに置いておいてくれ」
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