過去ログ - 唯「ボディがお留守だよ!」
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187:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:15:50.69 ID:ehA7zoAO
 鉛筆を握る紬の手に力が込められる。
お前に何が分かる? 出来るのではなくやらなければならない環境に置かれた自分の心中を、少しでも想像した事があるのか。
沸き上がる苛立ちをそのままこの軽率な男にぶつけたい衝動に駆られたが、父の期待を考えるとそれは出来なかった。

紬「……お茶を貰えますか?」
以下略



188:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:16:39.94 ID:ehA7zoAO
後藤「ったく、斎藤の旦那も人がわりーよな。初日から令嬢の目付け役なんて荷が重過ぎるっつーの」

 がしがしと頭を掻きながら後藤はシガレットケースを取り出す。

後藤「っと、流石に煙草はマズいよな。失敬失敬」
以下略



189:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:17:27.98 ID:ehA7zoAO
紬「っ!?」

 散らばる紙屑を見て、紬は呆然とするしかなかった。

後藤「この年から机にかじりついてっとろくな大人になんねーぞ。折角誰も見てねーんだからガキらしく遊ぼうぜ」
以下略



190:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:18:18.93 ID:ehA7zoAO
後藤「さて、と……。意気込んだは良いものの最近の子供の遊びはよく分かんねーんだよな。何かやりたい事無いのか?」

 普通の子供ならばここであれをやりたい、これをやりたい、と騒ぎ立てるものなのだが、この時の紬は違った。
胸の前で両手を組んでしゅんとうなだれたのだ。
以下略



191:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:18:50.00 ID:ehA7zoAO
 乱暴な物言いに紬は思わずたじろいだ。
そして後藤は紬の反論を待たずに閃いたぜ! と叫びながら部屋を飛び出してゆく。

紬「…………」
以下略



192:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:19:24.75 ID:ehA7zoAO
後藤「日曜に早起きした甲斐があったぜ。まさかこんなところで役に立つとはな」

 紬には何の事を言っているのかさっぱり分からなかった。
困惑する紬を余所に後藤はてきぱきと机を片付けてグラスを置いてゆく。
以下略



193:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:20:16.21 ID:ehA7zoAO
後藤「と、こんなもんか」

 後藤は満足げな笑みを浮かべて鉛筆を紬に手渡した。
やってみろと手で合図をするが、紬はもじもじして顔を伏せている。
以下略



194:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:20:49.51 ID:ehA7zoAO
 紬は顔を両手で覆い、肩を震わせた。
小さな指の間から一粒の涙が零れ落ちる。

後藤「なぁにめそめそしてんだよ」
以下略



195:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:21:34.70 ID:ehA7zoAO
 まぁ斎藤の旦那は年食い過ぎってから厳しいかもな、と喉を鳴らして笑うと、後藤は紬の両手を取った。
涙でくしゃくしゃになった紬の顔が露になる。

後藤「そうだ。俺の夢はバイクで世界中旅する事なんだけどよ、お前がこれくらい大きくなったら後ろに乗っけてやんよ」
以下略



196:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:22:27.42 ID:ehA7zoAO
 それから後藤と紬は紬の父や厳しい従者達の目を盗んで色んな事をした。
温室育ちの紬にとってそれらは新鮮で、人格に大きな影響を与える。
 多くの習い事の中で特にピアノに熱心に打ち込んだのもその日の出来事がきっかけだ。
今でも時に見せる向こう見ずな好奇心も、かつて紬が後藤のそんな人格に憧れた事が影響なのだろう。
 彼女が何か楽しい事を経験した時に常套句のように口走る「するのが夢だったの」という決まり文句はその日から始まった事は、今となっては彼女自身も覚えていない。
以下略



197:以下、三日目金曜東Rブロック59Aがお送りします[saga]
2010/12/10(金) 22:23:14.48 ID:ehA7zoAO
 あの時後藤が示した身長に到達する事は出来ただろうか。
そんな自問自答を最後に紬は考えるのを止めた。

紬「その写真に写ってるのは従者衆の一人、後藤よ」
以下略



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