過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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214:1 ◆3vMMlAilaQ[saga]
2010/12/09(木) 22:42:38.39 ID:JQ0q84U0
静かな静寂が訪れて、どれくらい経ったか分からない。
一方通行には1分にも1時間にも感じられ、おかしくなった時間の感覚は何の役にも立たなかった。
「……一方通行」
そんな中、弱々しい番外個体の声が響く。
「……一方、通行……」
名前を呼ばれる。
たったそれだけだったのに、そもそも『名前』なんて言って良いのか分からないような、ただの記号の様なものなのに。
「……ちゃンと此処に居ンぞ」
なのに、それだけで、身体中が暑くなる。
火照って、頭の中が真っ赤になった様な気がして、胸の鼓動が早くなる。
ふわふわして危なげな、そんな感覚。
おかしくなってしまいそうだと思ったし、それ以前に、自分は既にどこかネジが緩んでしまっているのだとも思う。
けれど、それで良い。そのままで、もう塗りつぶそうとは思わない。
以前は認めたくなくて、ただその感情に嫌悪感しか抱くことができなかったし、
自分がそんな事を考えるのは間違っているとも思っていたし、自分の本心に逆らってきたけれど、
そろそろ自分に正直に向き合ってみて、嘘をつくことを止めて、そして番外個体に向き合いたい。
一方通行の中で、生まれて初めての感情が芽生える。
守ると決めた打ち止めや黄泉川、芳川の様な人達へ向ける感情とは違う、
自分には絶対縁が無いと思っていた感情、考えただけで虫唾の走ったあの感情。
「………好きってことなンだよ、クソッたれが……」
掠れた小さな声は、冷たい空気に紛れて、たったドア一枚に隔たれた番外個体にすら届かない。
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