過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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372: ◆3vMMlAilaQ[saga]
2010/12/26(日) 20:55:31.71 ID:FDyGJ6A0

番外個体は最初と変わらない場所でしゃがみ込んで、身体を小刻みに震わせていた。
一方通行の気配を感じ取ったのか、顔を上げる。
血色の悪い、青紫の唇。しかし顔はどこか赤みを帯びている。
そんな彼女はうっすらと微笑んで、


「遅かった、けれど。ちゃんと良い子で、とってこれたかにゃん?」

「……あァ。つーかオマエ、」


明らかに番外個体はおかしい。
不安定なその姿は、一方通行の危機感を煽る。
一方通行はしゃがみ込んで目線を合わせると、流血のない左腕で番外個体の額に触れようとする。
普段なら触るな馬鹿とでも言ってきそうなのにすんなりと受け入れられた。


「……ン、こりゃ熱あンな。あっちィし。……悪ィ、俺が遅かったせいだ」

「ひゃひゃ、そうだよ、あなた遅いからさぁ」


いつも通りの悪態なのに、それは酷く弱々しい。
それでも彼女は一方通行の頬や右腕を見て、他人の心配しかしない。


「血、でてる。どうしたの? 痛い?」

「……痛くねェし、別にどォもしてねェよ。それより立てるか? ……いや、タクシー呼ぶか」

「嘘だよ、何かあったんだ。ミサカの知らないところで。ねぇ、どうしたの? あの人と会ったんでしょう? ミサカは、」


立ち上がってタクシーを呼ぼうと携帯を開く一方通行に、番外個体が食いついてくる。
声を大きくして彼女も立ち上がろうとしたところで、


「――っ……、」


ぐらり、と番外個体の身体が傾いた。

芯を失った彼女は一方通行にそのまま倒れ込んできて、彼に身を預けるようにしてもたれ掛かる。
力の抜けた冷え切った身体は相変わらず小刻みに震えていて、しかし耳元に掛かる彼女の吐息は熱を帯び、こんな時なのに一方通行の身体をぞくりと駆け抜ける。
番外個体の身体を支えるようにして彼女の背中に手を回して撫でつつ、やはりこれは歩いて帰れないなとタクシーを呼ぶことにした。



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