過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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376:1 ◆3vMMlAilaQ[saga]
2010/12/26(日) 21:04:53.16 ID:FDyGJ6A0
『――特に変わったことはない、風邪の症状なんだろう?』
「あァ、少し前からそれっぽかったらしいし、一応脳内の電気信号を確認してみたがウィルスとかでもねェと思う」
『こっちにいる妹達にも確認してみたけれど、ネットワーク上でも以上は発見されないね。
もしかすると疲れからくるのもあるかもしれないね? ただこの時期だ、君も風邪には十分気をつけるんだよ?』
「オマエは馬鹿か、誰に向かってモノ言ってやがる」
『そうそう、風邪に効く薬といえばカエル印の会社の薬が医者としておすすめだよ?
それから患者は汗をかくだろうけど放っておくとよくないからね? 病人は繊細だ、気をつけるんだよ?』
「……いちいちうるせェな、分かってるっつの」
商店街を歩く買い物帰りの一方通行は、電話をしながら歩いていた。
電話は好きではないが、最近その機会が増えてきたと思いつつ、掛けた相手はカエル顔の医者だ。
うさんくさい喋り方をする老人に一応番外個体の症状を伝えたのだが、この時期にはよくある風邪だろうとのこと。
ついでに良く効く薬なども教えて貰い、途中でドラッグストアに立ち寄って冷却シートと医者おすすめの風邪薬、ついでにゼリーも買う。
会計の際、スーパーでもドラッグストア、どちらの店員も彼の傷ついた右手をみてぎょっとしたような顔をしたのが印象的だった。
……袋を持って歩く家までの道のりが、やけに長く感じられる。
正直、番外個体にどんな顔を向ければいいのか、どんな態度で接して良いか、分からない。
彼女が好きだった人を殴り、彼女が好きな店を荒らし。
それを知った彼女は、どんな反応をみせるのだろうか。
男に放った言葉は、そっくりそのまま自分に跳ね返ってきた。
俺は番外個体の何を知っている。
俺は番外個体の気持ちを汲んでやっているか。
俺は番外個体の近くで生活しているだけなのに、何か勘違いをしていないか。
改めて感じたその疑問は一方通行にまとわりついて、彼の足取りを重くさせる。
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