過去ログ - 番外個体「――ただいま、帰ったよ」
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745: ◆3vMMlAilaQ[saga]
2011/02/21(月) 22:55:18.06 ID:drd2jubno


雨に打たれてじっとりと湿った服を洗濯機に投げ入れ、バスルームへ足を踏み入れる。
シャワーでざっと身体を流してから、ゆっくりと湯船に浸かった。
ラベンダーの香りがする白いお湯が心地良くて、思わず目を細めてしまう。
足を伸ばすには少し狭いバスタブの中でぎりぎりまで沈み込むと、茶色の柔らかい髪が水面に浮かび、時折頬をくすぐった。
くわ、とあくびする。適温とラベンダーの香りが身体をほぐし、脱力しきった身体を動かすことすら酷く億劫だ。


『番外個体』

「にゃに……?」


ドアの向こうから自分を呼ぶ声。
気の抜けた間抜け声で何となく返事をしてから、その声の主が一方通行以外に考えられないことに気が付いた。
何故だかわたわたと焦って、妙にはっきり冴えた頭でお湯が大分ぬるくなっていることを知る。
どうやら知らぬ間に、うとうと微睡んでいたみたいだ。


「な、何? 今お風呂入ってるんだけど。裸だよ裸。ひゃひゃ、もしかして性欲持て余しちゃったクチかにゃーん?」


自分で言っておきながら、いつかの自慰行為を思い出して顔をしかめる。
そういえばあの時、果てる瞬間に浮かんだのは直ぐそこに確かに居る同居人だった。

なるべく考えないようにしていたことを不覚にも思い出してしまい、急に羞恥心が沸き起こる。


「あうぅ……」

『着替え、此処に置いておくからな。もォパジャマで良いだろ。あと風呂ン中で寝るンじゃねェぞ、最悪死ぬからよォ』

「わ、分かってるし。ミサカそんなに間抜けじゃないもんね」

『どォだか。さっきも怪しかった気がするけどなァ』


一方通行が喉の奥で笑っているのが分かる。見透かされているようで少し悔しいが、それでいて誰かに心配してもらえることは素直に嬉しい。
そう思えるようになったことは番外個体にとって大きな進歩といって良いだろう。
以前の彼女であれば、心配という名の愛情をヘドが出ると嫌悪し、自己満足だと嘲笑し、余計なお世話だと受け入れる以前に踏みにじっていただろうから。


「あーもう。ミサカも焼きが回ったなあ」

『何一人でブツブツ言ってンだ』

「独り言に突っ込むのは野暮ってやつだよ。……あ。雨、やんだ?」

『まだ暫くやみそうにねェな。明日も雨だと。あくまで予報だから当たる保証はねェけど』


湿気が多いと過ごしにくいったらねェなと一方通行が続けてぼやく。
何となく気になって聞いてみた問いの答えは、期待していたものとは正反対のものだった。
柄にもなく、晴天が見たいなどと思っていたのだが。


「そうだね。雨、早くやめば良いのにな」




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