過去ログ - 麦野「ねぇ、そこのおに〜さん」2
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9:とある星座の偽善使い(フォックスワード)プール編―3
2010/12/09(木) 20:58:02.97 ID:Td4mkwAO
ボートの上から麦野が手を伸ばす。冥土帰しの腕を持ってしても朧気に残る原子崩し(メルトダウナー)の光芒が穿った古傷。
それを艶めかしい手付きで麦野は触れる。愛おしむように慈しむように。
麦野「それを申し訳なく思う気持ちと、それを嬉しく思う気持ちの両方が私にはある…私は、歪んでるからね」
上条「………………」
麦野「だから、やっと私にもアンタから痛みを与えてもらえた気がする…やっとアンタのモノになれた気がする…」
麦野「ありがとう」
麦野「壊す事しか知らない私に、たくさんのモノをくれてありがとう…当麻」
いつものような下品な悪態も付かず、かといってお姉さんぶるでもない…始めて口づけを交わしたあの星空で見たような、洗い流されたように透徹な笑み。
上条「…壊す事しか知らねえってのはもう無しにしようぜ沈利」
あの時と違うのは水着を着ている事と『光の翼』がない事くらいか、などと思いながら上条はボートの麦野に手を差し伸べる。『アルカディア』でのローズバスの時と同じように。
上条「前にも言ったけど…リンゴの皮むきだって上手いし、淹れてくれた紅茶はあったかかった。退院祝いに鮭料理作ってご馳走してくれたろ?」
麦野もその手を躊躇なく取る。片足をプールへと入れる。それを上条が両腕でしっかり抱き留める。
上条「第一九学区の時だって、最後は必死になってオレを助けてくれた…もうそれでいいんじゃねえか?」
麦野「…そうかしらね…」
寄せては返す緩やかな波の間に二人は抱き合う形で互いに濡れた身体を温めあっていた。ここに辿り着くまでに何度も殺し合いを繰り広げた偽善使いと首狩りの女王が。
上条「…オレさ、ある人に言われたんだ。“欲しいもんがあるなら力づくで奪え。守りてえもんがあるなら腕づくで浚え。”って」
麦野「…どっかのホスト崩れのチャラ男みたいな言い草ね…それで?」
上条「…なんつーかあんまそういうの好きじゃなかったんだけどな…今ならその人の言う事が少しわかる気がするんだ」
今、消え入りそうな夏の幻を抱くように身を寄せ合っているなどと誰が知れただろう?あの血溜まりの路地裏での出会いから。…それはきっと誰よりもこの二人が信じられはしなかっただろう。
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