280:泥源氏 ◆88arEec0.g[sage]
2010/12/25(クリスマス) 02:34:22.95 ID:GcS1DpIo
彼女は目を閉じ、唇を示す。
悪ふざけではなく、本気のようだ。
強気な彼女だが、不安が彼まで伝わってくる。
――――痛いほどに。
(――ったく、不器用すぎンだろォ)
同時に、自分ほどではないか、とも彼は思った。
積極的な彼女に、少しだけ惹かれている自分には気づいていたのだ。
応えてもいいのではないか? うちなる彼がささやく。
しかし、微妙な距離が、どうしても踏み出せない。
なんだかんだあの男のことを言えないな、なんて自嘲する。
(愛なンざよくわからねェが……)
それでも、彼女の想いを恐れたりは、したくなかったのだ。
「……オマエ一人だけを見ることは出来ねェ」
「ん……いいよ」
ささやくのは、残酷な言葉。
そして二人は、誓いの口づけを交わした。
温度差を、唇に残して。
それは、二人の距離を表していたのかもしれない。
736Res/480.67 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。