過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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511:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2011/08/18(木) 23:30:54.39 ID:ivATNVgBo
 真紅は逆転の糸口を探し、人工精霊に目を向けるが、


 ―――! ―――!


 赤い光球はメイメイに圧し掛かられるようにして床に押さえつけられ、発光を繰り返している。

 単体としての力は各々の人工精霊にそこまでの差はない。それがこうもあっさりと押し切られているのは、ひとえに真紅の消耗が原因である。

 能力を行使するには契約者の体力を消費するが、だからと言って薔薇乙女自身もまったく消耗しないわけではないのだ。 

「何を企んでるのか知らないけど、無駄よぉ? 頼みの人工精霊もあの有様。貴女が必死にかばった翠星石はもうお人形さん。ぜーんぶ無意味だったわねぇ?」

 クスクスと笑いながら、水銀燈が真紅を覗き込んだ。

「……」

 しかし返ってきたのは無言と、強い視線。

 焦りはあれども諦観も絶望もない、生きた瞳だった。

「何よ、その眼……」

 ザワザワと水銀燈の背筋を、苦々しい何かが上ってくる。

 彼女が自分に向けてくる視線は、負の感情に彩られていなければならないはずだった。敗北の屈辱に塗れていなければならないはずだった。

 この妹は、過去に自分を『壊れた子』と呼んだのだ。

 それだけでも憎いというのに、つい昨日、あろうことか『御父様』の意思であるアリスゲームも否定している。

 首を落とす。

 ローザミスティカは噛み砕く。

 自分が『御父様』と出会った暁には、真紅という妹を薔薇乙女から忘れてもらう。

 それほどの憎しみが、胸中に渦巻いている。

 その彼女の、絶望と諦めに殺された表情が見たかったというのに。

「気に入らない、気に入らないわぁ……」

 水銀燈が目を細め、苛立たしげに呟く。かみ締めた唇の奥に、舌がちらりと覗いた。

 ――しかし彼女は気がつかない。

 いくら冷酷な部類に入る水銀燈とは言え、普段の彼女ではありえないほど、醜い思考と表情をしていることに。

「……」

「……」

 赤と黒のやり取りに、蒼は無言を貫く。窓際で腕を組んだセーラー服も同様だ。

 まるで興味がないというような無機質な視線を、二人の応酬に注ぎ込んでいた。

「水銀燈、貴女は」と、真紅が口を開いた。

 貴女は、自分をおかしいと思わないのか。

 そう問おうとした彼女は、一瞬だけ迷ってから、

「寂しいと思わないの?」

 と、言った。

「……なんですって?」

「……」

 問いを放ったにも関わらず、何も問うてない真紅の瞳が、水銀燈を映し続ける。

「っっっ」

 黒い翼が彼女の感情に応じてバサリとはためいた。


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