過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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569:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2012/01/09(月) 20:06:53.15 ID:HxMoiHH+o

 ジャキンジャキンと甲高い音が連続する。

「くっ!」

「きゃあっ!」

 白井はその度に自ら身を沈め、あるいは初春の背を押し、襲いかかる刃を回避する。

 すでに間合いは詰められていた。

 狭い路地は、幼児のごとき体躯のオッドアイには障害にならない。

 白井と初春の脚は鈍り、オッドアイは全力で動ける。

 打ち振るわれる刃の一撃一撃は、回避に失敗すれば即座に首や腕を飛ばすだけの威力がある。

 時折、白井が牽制に放つ蹴りや、路地脇に転がるバケツ等に邪魔されて追撃が緩むが、気休めにしかならなかった。

 狭い路地の他、彼女たちにとって不幸だったのはここがビル街であったこと。

 すぐに大きな通りに出られるかと思っていたが、ビルと闇夜が作り出す迷路は、そう容易く二人を解放してくれないらしい。

 白井は頭の中に広がる地図と持ち前の空間把握能力で現在位置と進行方向を割だそうとするが、

 ヒュン!

「っ!」

 耳に響く斬空の音。

 白井は脳内に展開していた地図を破棄し、音に集中する。

 音の源泉と速度、種類を瞬時に聞き分け判断し、斬撃の方向と狙いを特定した。

 袈裟架け――初春の首筋。

 白井は両手で隣の彼女を引き寄せて地面を蹴り、さらに右の壁を蹴りつけた。

 振り下ろされた鋏の先端は、ギリギリで初春の背中を傷つけない。

 しかし。

「痛っ!?」

「白井さん!?」

 白井の後ろ右上腕に焼け付く痛み。

 掠った。だが浅い。

 その事実を流れ出した血液の感触で把握した白井は、左側の壁を蹴ってさらに前へと跳躍。着地と同時に初春を抱えたまま、全力で走り出す。

 鋏を振り下ろした姿勢のオッドアイはすぐに追撃に移れない。

 歩数にして5歩ほど稼いだ。


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