過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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576:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2012/01/09(月) 20:14:44.85 ID:HxMoiHH+o





 ズン、と鈍い音とともに、僅かに地面から持ち上がったオッドアイの腕が、

「……」

 ゆっくりと、ゆっくりと、巻き戻すように落ちていった。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

 小さな手の甲が再び地面につくと同時に、鋏に体重を預ける白井。

 荒い呼吸。

 白井にして、体力の限界だった。

 しかしそれでも彼女は目を閉じたり、鋏から手を離したり、ましてや身を起こそうともしない。

 当たり前だった。

「動かない方が、あなたの、身のためですの」

 と、荒い呼吸の合間に白井が言った。

「……」

 息切れもしていないオッドアイが、無言のまま見上げてくる。

 約45度に開かれた刃は、オッドアイの頭の両脇に先端を食い込ませていた。

 刃はオッドアイの首ギリギリの位置にある。鋏の取っ手を少しでも開けばバランスが崩れ、倒れ込む形でその首を切断するだろう。

 さらに白井の右手が、オッドアイの左肩を押さえ付けていた。少しでも動けば、真横にある壁に中に転移させることも可能だ。

 だが敵を完全に無力化したわけではない。

 しかし、こちらの戦術的勝利が確定し、さらに相手が抵抗の様子を見せないため、これ以上の攻撃を加えることは、風紀委員として不可能だった。

 それにどんな能力か知らないが、オッドアイは重要な証人か、あるいは証拠品だ。

 可能な限り傷をつけないことは、今後のためでもある。

「初春、通報をしてくださいまし」

 だから白井は、背後にいる仲間に呼び掛ける。

 いまの正確な位置はわからないが、今夜は出動している風紀委員が多い。通報すれば、すぐに駆け付けてくるだろう。

 ましてや『電撃使い襲撃事件』に重要参考人(あるいて重要物件)を確保したとあれば、それこそ最優先で応援が送られるはずだ。

(……?)

 そこまで考えた白井の胸に、僅かだけ違和感が生まれた。

 なんだろうか。

 何か、重要なことを見落としているような……。

 だがそれが形を持つ前に、

「……」

 オッドアイが無言のまま、僅かに身じろぎした。


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