過去ログ - 上条「まきますか? まきませんか?」
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709:上条と真紅 ◆zEntDqWLlc[sage saga]
2013/02/09(土) 23:55:37.21 ID:oNEmuR9xo

「だから待ってて? 大丈夫よ? すぐだから。すぐに貴女は変わることが出来るから! ちょっとずつ、ちょっとずつだけど、貴女は変わることができるから! この、出来損ないの紛い物の人形と私の魔術があれば、いらないものをそぎ落として、貴女は理想に向かって進んでいけるから!」

 中性的な魅力すら見て取れるセーラー服は、口元に歪んだ笑みを、瞳に歪んだ光を浮かべ、他の誰にも目を向けることなく美琴を見て、言葉を重ねる。

「そして私と蒼星石、この都市の電撃使いは片付けた暁には、貴女は最高にして唯一無二の電撃使いになれる! ただひらすらに美しい、この現代社会で必要不可欠なエネルギーの女王になれるのよ!」

「な、なに言ってんのよアンタ!」

 白井から向けられる少し行き過ぎた親愛表現とはワケが違う。

 混じりっ気のない純然たる狂気を当てられた美琴の声色に、僅かに怯えが浮かんだ。

(……)

 一方、初春を護る様に立っている真紅は、セーラー服の様子に目を細めた。

 この狂気。この執念。この視線。

 いずれも、ごく最近見たことがある。



 ――上条の部屋で腕を引きちぎられそうになったとき、水銀燈が浮かべていた自分に対する憎悪だ。



 冷酷な水銀燈であっても、これまでのアリスゲームで一度も見たことのなかった狂気の妄執。

 あの時の彼女が浮かべていたモノと、セーラー服のそれは、気のせいとは言えないほど似通っているように思えた。

 そしてさらに、

「……。」

 離れた位置で蒼の背中にスタンロッドを押し付けながら、姫神は胸の中に、奇妙な考えが浮かんでくるのを感じていた。

 セーラー服の狂気に当てられた、のではない。

 その狂気を吟味した結果、思い当たる一つの顔があったからだ。

 自らの考えが、何一つ間違っていないと信じている顔。自らをオリジナルと信じて疑わなかった、その男の顔。

 あくまで直感だ。なんの根拠もない。ただ単に、己の中にある感傷と記憶が、似たような顔をしているセーラー服と重なっただけかもしれない。

 それでも姫神は怖気を感じ、そして、その男の名前が、脳裏に浮かぶのを止められない。

 アウレオルス=ダミー。

 自分を本物と信じ、そして裏切られ、それでもなお足掻いていた、あの紛い物の男の顔が、セーラー服に何故かだぶって映ったのだ。

「……。」

 姫神の視線の先では、彼女の内心に関係なく壇上の叫びが続いている。

 その様は、まるで芝居の様だ。


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