11:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 22:01:01.87 ID:fTbLwVYo
「な、なんだよ」
「ううん。べっつにー?」
私はいつになく浮かれた気持ちで、後ろにステップを踏むように少し離れる。
うん、やっぱり悪くない。使い古された古典的な慣用句だが実際に言われてみればそんな事は関係ない。
彼女の見立てに狂いはなかったようだ。この朴念仁からこんな台詞を引き出したのだから。
ちなみにそんなアイツはどんな格好をしているかというと――おいコラ。アンタはどうして休日なのに学ランなんですか?
「あー……実は今日補習でな……」
案の定だった。あまりに捻りのない回答。もはやお約束。予定調和ともいえるだろう。
ああ、なんという事でしょう。祝日までこのバカの相手をしなければならない担当教師が不憫でならない。
「これでもっ! 午後まであったのを勘弁してもらって急いで来たんだぞ! 先生に土下座して!」
「アンタ、それ自分で言ってて悲しくならないの?」
「うるせーチクショー!」
呆れ返ってしまっている私にアイツは慌てて言い訳じみた事を捲くし立てるのだけど、なんだかその様子がおかしくって、つい笑ってしまった。
そんなみっともない真似をしてまで、私との約束に間に合わせようとしてくれたのだ。
そしてきっと、学校からここまで全力で走ってきてくれたのだろう。一刻も早くと。
涼しげな秋空の下だというのに汗びっしょりになりながら、私に会いに来てくれたのだ。
もしかしたらそれは単なる私の一人合点かもしれない。
けれどそんな事は関係ない。アイツは結果として、そして事実として確かに走ってきてくれた。
それはなぜか。私と約束していたからだ。一方的に呼びつけたにもかかわらず。
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