357:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/02/15(火) 03:46:42.81 ID:68rLWNoto
『何故です? 小柄とはいえ人を一人運ぶには人数が足りないでしょう。それに――』
「我々の本来の仕事、かね?」
つまらなそうに博士はロボットを一瞥し、ふん、と鼻で嗤った。
「確かに上からの命令は『ピンセット』を手に入れようと造反した『スクール』の処理だが……私には正直、どうでもいいのだよ」
『ですよねー……』
四足歩行のロボットを操作していた主――馬場芳郎は薄々感付いていた事実に、博士とは離れた地で嘆息した。
この博士と呼ばれる老人は、外見からは機械めいた印象を受けがちだが――その実、とても利己的な人物である。
病的なまでの探究心。
彼は世界の毒に魅入られた人物だった。
例えば数学や科学に代表されるように、この世界は実に精巧に作られている。
その魅力に憑り付かれた研究者は数知れない。あらゆる物を投げ打ってさえ真実を探求しようとする者は後を絶たない。
さながらファウスト博士のごとく悪魔に魂を売る事も厭わない彼は、他人はおろか自分ですら省みない。
今回にしても、珍しく人間に興味を持ったと思えば相手はよりによって『心理掌握』。
学園都市に――世界に七人しかいない超能力者といえど彼にとっては貴重なモルモット程度の物でしかないのだろう。
「本当なら第一位か第二位が欲しかったのだが、まあいい。今回のところはこれで満足しておく事にしよう。
それに、第五位ですら天恵に等しい。何しろ超能力者だ。個人で好きに研究できる機会などそうあるまいて」
ロボットのカメラとマイクが捕らえる博士の姿と声に、馬場は小さく「楽しそうっすね……」と辟易するしかなかった。
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