過去ログ - 御坂「名前を呼んで
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6:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga]
2011/01/05(水) 21:48:51.14 ID:fTbLwVYo
そんな感じにもやもやを抱えて一人でぎゃわーってやってると周囲の目が自然と私に向けられる。
唐突に我に返ってそれを自覚し、誤魔化すように私はショーケースの中を作り笑いで眺める。

今になって気付いたけれどジュエリーショップだった。
当然のようにそこにはネックレスやらペンダントやらがきらきらとしていて、その中には言うまでもなく指輪が一番目立つ位置に配置されている。
美しくカットされた宝石が意匠を凝らした台の上に据えられていて、その輝きに一瞬目を奪われるのだが。

少しだけデザインと大きさの違うリングが仲睦まじく寄り添い合っています。

はい。そうです。
ペアリングです。
どう見ても結婚指輪です。

普段ならなんて事はない(と思う)ただの鉱石と金属のオブジェも今の私には混乱を助長させるだけでしかない。
いやいや落ち着け私。結婚とか考えるにはちょっと飛躍しすぎじゃない?
っていうか私まだ中学生だし、そもそも付き合ってもないし、それ以前にアイツの事なんか別に――。

そこで『アイツ』と思ってしまうあたり確実にまいってしまっているのだけれど、私がそんな単純な事に気付くはずもないのはご承知の通りだった。

ま、そんな些細な事はどうでもいい。
私は照れと乙女チックな理想(救いようのない部類の妄想)とからくる花恥ずかしい否定の間で自問自答を繰り返しながらも視線を指輪から外せずにいた。

どんなに否定しようが私も女の子で、恥ずかしながら例外なくロマンチックな甘い恋愛とかそういうものにどうしようもない憧憬と羨望を抱いている。
そういう意味で結婚指輪というのは、あれやこれや、とても人には言えないような感じの妄想を掻き立てるには恰好のアイテムだった。
ガラスに映る顔はいい具合に赤くなっちゃってるのだけどテンパってる私が気付くはずがない。通りに背を向けていて本当によかった。

秋の涼しい風が火照った顔に気持ちいい。
見上げれば澄み切った空は高く、美しい蒼がそこに佇んでいた。
しかし相変わらず私の心中はそれとは対照的に大荒れだ。
もう何が原因でどうすればいいのか、そんな簡単な事も分からないほどに混乱している。

落ち着こう。そう思って私は目を閉じ軽く俯く。
深呼吸を繰り返しているとなんとか平常心を取り戻す事に成功した。
気持ちの切り替え完了。うん、よし。目を開ける。

ガラスに映った私の背後に、アイツの姿があった。


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