633:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/05/09(月) 02:44:54.06 ID:Cu0QJs/Co
「死なせない――」
意識しないのに呟きが漏れる。
「死なせる――もんか――」
震える手ではケースの封を切るのも億劫で、その口を奥歯に挟み噛み砕くように折り割った。
尖った欠片に頬の内側が切れ痛みが走る。じわりと鉄錆の味が舌の上に広がった。
足は震えていていう事を聞いてくれない。
立ち上がるのすらできるか分からない。そんな状態で踏み出す事ができたとして一歩か二歩が関の山だ。
舌を舐める血の味に反射として唾液が出てくる。
どうしてだかこの味にだけは味覚はしっかりと反応してくれる。
だが都合がいい。滝壺はプラスチックのケースを口に咥え、中身を残らず朱く濡れた舌の上にぶちまけた。
そして血と唾液ごと能力爆薬の粉末を嚥下する。
――――何を――、――滝――もう――、――。
風などないはずなのに耳元でびゅうびゅうと音がする。
何か声が聞こえた気がするが無視した。
ケースの残骸を放り捨て、乾いた音を後ろに滝壺は彼の方を見る。
浜面仕上は査楽によって絞殺されようとしていた。
腕が彼の首に食い込み気管と頚動脈を圧迫している。
呼吸ができず酸欠を起こし、なけなしの酸素は血流を阻害され脳へ充分に供給されない。
締め付ける腕を引き剥がそうと指が掻くがもはや見るからに力は残されていない。
それでも必死になって締め付ける腕を掴み――。
「たき――つ――――はや――に、げ――」
吹き付ける幻風の中、彼の声だけははっきりと聞こえた。
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