691:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga !orz_res]
2011/05/18(水) 22:59:11.85 ID:32iMxubGo
ふと思いついて、右手を握る温もりに呼びかけてみた。
「ねえ、当麻」
「……なんだよ」
するとアイツは、まだどうにも呼ばれなれていないのかちょっとぶっきらぼうにそう返した。
私だって一応年上の相手を下の名前で呼び捨てする事にちょっと抵抗があるけど、でも一応、その……彼氏だし、いいかなーって。
照れくさいけどそれをムリヤリ押し込めて私は悪戯っぽく笑ってみせた。
「なんでもない。呼んでみただけ」
漫画なんかではよくあるセリフ。
でも実際には聞いた事のないあれだ。
それを私はついつい言ってみてしまった。
アイツはその言葉にやっぱり違和感があるのか眉をひそめる。
そりゃそうだ。私だってついさっきまで「実際こんな事言う事ないって」なんて思ってたのだから。
「はぁ? なにそれ、ワケ分かんねえ」
予想どおりの返事に私は笑う。
「この『呼んでみただけ』ってフレーズの意味さ、ようやく分かった」
ずっと疑問だった。なんでこんな事を言う必要があるのか。
ただ呼ぶだけ。特に用もないのに名前を呼ぶ。
その言葉に込められた意味を教えてあげよう。
「あのね」
もったい付けて一度切り、アイツの手をぎゅって握った。
それでアイツは私の顔を怪訝そうに見る。
視線と視線が交差する。
私が言うのもちょっと恥ずかしいけど、アイツの眼はなんだか凄く綺麗で。
「好きな人の名前を呼ぶだけでね、なんかこう、幸せ? みたいな」
「…………」
「照れてる?」
「オマエが恥ずかしい事言うからだろ」
そう言ってアイツはぷいっと顔を背けた。
なんだか凄く可愛い。その行動の一つ一つが凄く愛しかった。
「可愛い」っていうのはこういう気持ちの事を言うんだろう。
751Res/479.61 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。