82:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2011/01/19(水) 18:18:30.94 ID:Z9/RKEgRo
再び休日の雑踏の中。私たちは並んで歩いている。
先ほどまでと違って手は繋いでないけれど心なしかお互いの距離はその時よりも少ない気がする。
アイツはそれに気付いているのだろうか。体温や吐息さえ感じられそうな距離。肩を並べて、というにちょうどいい。
でも手は繋いでいない。少し間違えば触れてしまいそうだけど、どうしてだかそんな事はなかった。
それはやっぱりお互いに意識しているからだろう。
正直に告白すれば偶然を装って何度か試しているのだけど。
でもその度にアイツは急に辺りのものを指差したり突然の話題の切り替えなんかをしてきてさり気なくかわされてしまう。
こういうとこだけ妙に勘がいいんだから。まったく。
気分はやけにすっきりしていて、なんだかこの青空のようだ。
空は突き抜けるような蒼で、秋晴れというに相応しい。
何とかと秋の空、という言葉があるけれど、少なくとも今日いっぱいは晴れそうだ。せっかくのこんな日に雨に降られちゃ堪らない。
いつになく上機嫌な私(どうしてかは押しなべて説明する必要もないだろう)とは正反対にアイツはどこかよそよそしい。
私が何か話題を振っても返事はどうにも上の空だし、そのくせ何か考え事をしているとか私を避けているという風でもない。
困っているというか戸惑っているというか、そんな感じだ。それは私の態度にだろうか。
なんだかあっけなく吹っ切れてしまった私は一時間前までとは何かが決定的に違っていた。
表面的にはあまり変化はないのだろうけれど、何というか……素直だった。
それはアイツに向けてという意味ではない。他でもない、私自身に対してだ。自分の心に、感情に素直だった。
当然といえば当然だろう。私が自分に言い訳していたものは感情にしろ行動にしろ全てアイツへ向けるものだった。
そのベクトルがどういう性質のものなのか自分でも分からずに、だからずっともやもやしたまま私は今日を過ごしていた。
いや、それはもっと前から……私が自覚もなしにアイツに恋心を抱いた時からだろう。
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