過去ログ - 俺の妹が身長180cmなわけはない
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266: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga]
2011/02/11(金) 22:17:39.44 ID:XdHsMWa0o
『あ……別にあなたが頼りにならないとかそういうわけではなくて』
すると、俺の気持ちを察したのか黒猫がフォローをしてくれた。普段つんけんしてはいても根は優しいやつだからな。
だから、俺は気にしていないよ、というニュアンスも込めてわざと意地悪に言ってやったんだ。
「じゃあ、是非教えてもらいたいもんだな。頼りにならないわけじゃないんだろう?」
数瞬の間が空く。うつむきがちになり視線をさまよわせて、言うかどうかを迷っている姿が容易に想像できる。
どうにもいたたまれなくなった俺が、言いづらいなら別にいいんだぜ? そう言おうと思った時のことだった。
『…………あなたにあんなことを言っておいて自分はどうなのか、と思ったの』
あんなこと?
「自業自得ってことか?」
『もっと前よ』
もっと前? 俺ってこいつに何か言われたっけ?
『私が言えるのはここまでよ。ところで――』
これ以上追及するなと言うように、黒猫は話題を変えた。
『さっきから鳴っているこの騒音はなんなのかしら』
「ああ、これな。沙織がプラモの塗装してるんだよ」
実はさきほどから、沙織の部屋からドルルルルという音が響いている。
学校でボールに空気入れる機械があったろ? ちょうどあれみたいな音だ。
『塗装って、要は色を塗るのでしょう? なのになんでこんな騒音が出るのよ。なにか妖しいことでもしているのではないの?』
「なんでもコンプレッサーとかいうやつの音らしいぞ。エアブラシってのを使うにはそれが必要なんだと」
俺も、以前沙織に教わって塗装に挑戦したことはあったが、その時は筆を使った塗装だった。
エアブラシについても多少教えてもらったが、如何せんめんどくさそうで、俺の性に合わなさそうだった。
エアブラシの方が綺麗に塗れるらしいが、俺は地道に筆で塗り塗りしている方が性に合っている。
ちなみに沙織が塗装している間は、俺の部屋の窓は全開にする必要がある。あいつが使う塗装ブースの排気口が俺の部屋に通じているせいだ。
一時期は消臭力を買い込んでみたりしてみたが、シンナー系の匂いの前には無力だった。
気付けば、コンプレッサーの音がするのと同時に窓を開けるのが習慣となっていた。
だが、最近はこの匂いもまんざらでもないような気がするから不思議だ。
これが親父が言っていた“本物のシンナーなど比べものにならん中毒性”というやつだろうか。
だとしたら、親父が塗装に反対していた理由もちょっとわかるよ。
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