過去ログ - 俺の妹が身長180cmなわけはない
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306: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga]
2011/02/16(水) 19:05:41.04 ID:axGrk5OPo
第十話後編
俺は、家に帰るとあやせとの約束を果たすべく、早速沙織の部屋へと向かった。
玄関には沙織の靴が置いてあったので、既に帰宅しているはずだ。
とんとん、と二回ノックをしてドア越しに沙織に声をかける。
「沙織〜、ちょっといいか?」
すると、すぐに沙織が顔を出した。
「あら、お兄様。どうしたんですか?」
「実は、沙織に相談があってさ」
「まあ! わかりました、少しお待ちいただけます?」
沙織はパッと顔を嬉しそうに輝かせたかと思うと、部屋に引っ込んでしまった。
そして、すぐさま再度顔を出した。
「あ、あの……私の部屋、今ちょっと散らかってて…………お兄様の部屋で窺ってもよろしいですか?」
「おう、当然だ」
こっちとしては相談に乗ってもらうわけだからな。本来ならお茶とお茶請けくらい用意してやりたいくらいだ。
残念ながら、今我が家にお菓子といえば、にぼしくらいしかないので不可能だけどな。
「ん? この匂い……また塗装でもしてたのか?」
俺がそう思ったのは、開かれた沙織の部屋からはシンナー臭が漂ってきたからだ。
ただ、いつもとは少し匂いの具合というか、匂いの系統が違う気がした。
「いえ、今日のは塗装ではなくて……これはパテの匂いですわ」
「パテ?」
なんじゃそりゃ。今まで何度か沙織のガンプラ講座を聞いた俺だったが、その単語は初耳だ。
っていうか、溶剤とはまた別の異臭の原因があることにびっくりだ。
ちゃんと換気してるんだろうな?
「パテは簡単に言えば紙粘土みたいなものです。こねて、成形して、好きな形に作り変えることができるんです」
「紙粘土ねえ……それで一体何ができるんだ?」
好きに作り変えることができるって言っても、売りものみたいな複雑な形ができるもんなの?
まさか、0からプラモデルを作り上げるわけじゃないだろうな。
「そうですね……中にはフルスクラッチをされる猛者もいらっしゃいますが、私はやるとしてもセミスクラッチどまりですから、パーツの手直しや延長などがメインの用途になります。最も簡単な用法ですと、肉抜き穴の穴埋めなんかに使われますわ。あ、一口にパテと言ってもエポキシパテやポリエステルパテなど種類があって、それぞれ特徴が――」
おーけー、久しぶりにこいつの言うことがわからないぜ。誰か通訳を呼んでくれ。
プラモって奥がふけえ……。
それにしても、こいつに限らず、オタクってのはどうして自分の分野だと饒舌になるんだろうな。
桐乃にしろ黒猫にしろ、自分の好きなことを話している時は目を爛々と輝かせていて――これがまた微笑ましい事このうえない。
早く終わんねーかなーなんて思っていたのがもったいないとさえ思える。
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