過去ログ - 俺の妹が身長180cmなわけはない
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309: ◆5yGS6snSLSFg[sage saga]
2011/02/16(水) 19:09:22.57 ID:axGrk5OPo
うーん、これは困った。沙織に相談すればいいアドバイスをもらえると思ったんだが、今日の沙織は、黒猫よろしくちょっと電波入ってしまっている。
まさか、あやせに「告白すりゃうまくいくよ」なんて言えるわけがねえしな。
片手で頭を掻きながら、どうしたもんかな……と思案していると、ひっくひっくとしゃくりあげる声が聞こえてきた。
何事かと思って顔を上げると、泣いているのは沙織だった。
「沙織!?」
慌てて駆け寄り、床に膝をついて、見上げるようにして沙織の表情を窺う。
「お、おい。どうした? 大丈夫か?」
沙織が泣くときはいつだって、明確な理由があった。
こけて怪我した時、誕生日プレゼントを貰って感極まった時――
だけど、今、沙織が何で泣いているのか俺には皆目見当もつかなかった。
沙織は、昔っから手のかからない素直ないい子だった。親の前ではわがままも言わないし、泣くことだって滅多になかった。
そして、沙織が泣いてしまった時、あやすのはたいてい俺の役目だった。
だってのに、今沙織が泣いている理由が俺にはわからない。ダメな兄貴で申し訳ねえよ。
「す、すまん。俺、何か言ったか?」
沙織は無言で首を振るが、まったく泣きやみそうにない。恐らく、なんで泣いているのかと尋ねても答えてはくれないだろう。
沙織が泣いている理由がわからない以上、俺にできることは限られてくる。
俺は沙織の隣に座り腰をおろし、右手でゆっくりと頭を撫でてやった。
「よしよし」
昔っから、こうするとすぐ泣きやむんだよ、こいつは。これで、落ち着いて話を聞くことができそうだ。
だが、今日に限っては俺の経験もあてにならなかった。
しばらく撫でていても一向に泣き止む気配がない。
終いには、俺の胸元に半ばタックルするようにして俺に抱き着いてきた。そのままベッドに押し倒される。
沙織は顔をうずめながら、相変わらずひっくひっくとしゃくりあげている。そして、両手は俺のシャツをしっかりと握りしめていた。
お互いに一言も発することなく10分ほどが経った。
時間が経つにつれて、沙織の感情も平静をとりもどしつつあり、既に泣き止んではいた。
お互いにどう声をかければいいかわからないまま、時間だけが過ぎていく。
「沙織」
先に声をかけたのは俺だった。
「沙織、俺が悪かったよ」
その言葉を聞いた瞬間、沙織の身体がびくっと震えたのがわかった。
今回、俺は失言らしい失言をしていない。ならば、原因は相談内容そのものにあると考えるのが妥当だ。
「おまえが、何で泣き出したのかはわからない。だけど、俺がした相談はおまえにとってはきっと聞きたくない話だったんだな?」
沙織からの返事はない。そして、身じろぎひとつしない。
多分俺の考えで正解だ。
「悪かった。この相談はなしだ。今さらだけどな。俺はおまえの泣いてるところは見たくねえしさ」
沙織はシャツを握るその手に、ぎゅっと、より一層力を込めた。
第十話おわり
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