過去ログ - 俺の妹がこんなに可愛いわけがないSSスレ Part.6
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527: ◆Neko./AmS6[sage]
2011/01/10(月) 00:10:52.51 ID:AkZboO+y0
やっとあやせに、いつもの笑顔が戻ってきた。……あやせ、お前はそうやって笑顔でいる方が似合っているよ。
俺達はそれから暫く、学校の事や友達の事など他愛も無い世間話をしていた。

お袋と桐乃がここを発って、すでに一時間半が経過していた。たとえ二人が宿へ直接辿り着かなかったとしても
奥多摩湖の外周をぐるっと囲んでいる国道へ出られれば、車も走っているだろうし携帯も繋がるだろう。

「お、お兄さん……あれ何でしょうか?」

あやせが俺の背後、それもかなり遠くを見る眼でボソッと呟いた。俺は立ち上がってあやせが見ていた方角へ
眼をやった。山の天気は変わりやすいとは良く言ったもんだ。おれは、あやせに言った。

「――――――霧だ」

お袋が言っていた宿の方角には、薄っすらとした霧が懸かっていた。それよりも問題は俺達が歩いて来た方角に
かなり濃い霧が懸かり始めていた事だった。風はほぼ無風状態。これじゃあ、霧が晴れるには時間が掛かる。
下手をすりゃ霧に囲まれて、それこそ身動きが取れなくなっちまう。――――考えるんだ俺。

「お兄さん、何だか……霧が濃くなってきてるように思うんですが?」
「……あやせ、いいか聞いてくれ。これから俺は来た道を少し戻る」
「お、お兄さん……どこへ行くつもりですか!?」

あやせが不安になるのは当然の事だろう。だが、俺だって確信があるわけじゃなかった……さっき来るとき見た
あれは、俺の遠い記憶の片隅にあるものと重なる様な気がしてしょうがなかった。

「あやせ、直ぐ戻る。そうだな……十分、いや二十分待っててくれ」
「ほ、本当に二十分待っていれば、お兄さん……戻って来てくれるんですね?」
「ああ、約束する。あやせ、お前をこんな所に……置き去りにするわけがねぇだろ。……必ず戻る」

あやせは涙目になって、今にも泣きそうだった。俺はあやせの頭にポンと手のひらを載せ、あやせに約束した。

「あやせ…………俺を信じろ」

あやせは必死で泣きそうになるのを堪えて、おれの瞳を真っ直ぐに見つめ頷いた。

「お兄さん……わたし待っていますから! 必ず戻って来て下さい」

後ろ髪惹かれるとは、こういう事を言うのかもしれねぇな。怪我をしていて歩けねぇわずか十五歳の女の子を、
車も人も通らねぇ様な林道に置き去りに出来る男が何処にいるよ。それも、もうすぐ日が暮れようとしていて、
おまけに霧まで発生してるってのによ。――――だが、あやせのためにも遣れる事はやってやりてぇ。


――――来る途中に通って来たあの三差路まで俺は全力で駆け出した。来る時にはお袋達の後を付いて行きゃ
いいぐらいの感覚で歩いていたから気が付かなかったが、よく見りゃ幾筋かの脇道がはしってやがる。下手に
そんな道に入ったら、あやせの元へ戻れなくなる。

森や林の中で道に迷わない方法は……っと――沙織!お前に感謝するぜ、サバゲーの講義が役立つとはな。



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