過去ログ - 佐天「嫁にして下さい!」 一方通行「ゴメン、ちょっと待って」
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144:貧乏螺子 ◆d85emWeMgI[sage]
2010/12/14(火) 23:49:21.73 ID:BQbw8is0
だから、この少女の目の前に広がる霧の存在を察知することは出来ても、晴らしてやることなどできようか。
そう、少なくとも一方通行は思っている。思い込んでいる。
だから、これは、単なる気まぐれだ。優しさなんかじゃ決して無い。
愚図る幼児を、下手にこれ以上騒がれたら面倒くさいからあやすようなものだ。それ以外であろうはずもない。


「お前にもわかんねぇよ。俺の、俺達の気持ちなんざよォ……」
「え…?」

不意に頭を撫でられた。
白く細長い指が絹のような髪を梳くように、優しく、柔らかに撫でる。
とくんと胸の奥が悦びに痛む。


「あァ……きっとわかンねェよ。俺がどんだけお前に      かをなァ」
     


聞き取れぬほどに小さく絞られた言葉に、佐天は何かを擽られたように過敏に反応した。
呟いた彼の唇が余りにも優しい曲線を描いていたせいなのかもしれない。
俯けていた顔を上げようとすると、乱暴に撫でられる。佐天の行動を見越していた一方通行の方が上手だった。
くしゃくしゃと、乱暴に、そして優しさを多分に含んだ撫で方が、彼が打ち止めにしてやるのに似ていた。
もっとも、それを佐天が知ろうはずもない。


「じゃあな。くだらねェ話はしまいだ。ガキは夜更かししねェでさっさと寝ろよ」


かかか、と意地悪く笑うと、一方通行は今度こそ踵を返し、階段を降りていく。
佐天は裾を掴んでいた手を、そっと一方通行の撫でてくれた場所にあてる。まだ温もりが残っているように感じた。
愚痴ぐらい言わせてくれてもいいのに。相談にくらい乗ってくれてもいいのに。アドバイスの一つくらいくれたらいいのに。
言ってやりたい不平不満は山ほどある。山ほどあったのだ。
それなのに、佐天に出来ることは、彼の放った言葉を反芻するに留まる。
口からは悪態の一つも出てこない。

冬の夜風を浴びても、尚一向に引く気配を見せない頬の熱に戸惑うことすら忘れて、
佐天は一方通行の去っていった方向をただ立ち尽くし、見つめていることしか出来なかった。




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