過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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2:VIPにかわりましてGEPPERがお送りします[saga sage]
2010/10/24(日) 16:09:11.17 ID:lnwWc/Y0
走る。走る。走る。

何処へ向かえば良いのか、どうして走っているのか。何も分からないまま、それでも少年はひたすらに走り続ける。
けれど少年には、たったひとつだけ分かっていることがあった。

誰から逃げているのか。

それを理解するのは簡単だった。少年の背後には、恐ろしい追跡者があったからだ。
追跡者は必死になって逃げ回っている少年とは対称的に、追跡者としてはあるまじきことに余裕の表情で悠々と歩いていた。
なのに、追跡者はたまに地面を軽く蹴ったかと思うと一瞬で少年との距離を詰めてくる。
だから少年は、とにかく必死で逃げることしかできなかった。

少年はそんな追跡者の態度が気に食わなくて仕方がなかったが、今は逃げるしか手立てが無い。
自分ではとてもではないがあの追跡者を退けることなどできないからだ。

突然少年の真横にあった壁が小爆発を起こしてコンクリートの破片を撒き散らす。
飛散した拳大のコンクリートが二の腕を抉るが、少年はすぐに体勢を立て直すと背後の追跡者を一瞥してから再び走り出した。
その様子を見ていた追跡者は一旦その歩みを止めると、とても詰まらなそうに溜息をつく。

「オイオイ、ホントに能力が使えなくなってんのか? 張り合いねえなあ」

『文句言ってねえでさっさと捕まえろ。もうすぐ第七学区の大通りに出る。人目につく場所に出られたら面倒くせえ。
 それに能力が使えないってんなら好都合だろうが。捕まえやすいだろ?』

追跡者がインカムのマイクに向かって不平を漏らすと、すぐさま男の声が返ってきた。
それはどう考えても、明らかに追跡者よりも一回りは年上の男の声。
にも関わらず、追跡者は一切口調を改めようとしなかった。

「ま、そりゃそうだけどよ……。手加減すんの、結構難しいんだぜ? 下手に傷つけたら後が怖い」

『ちょっと傷をつけるくらいなら、学園都市の医療技術で傷跡ひとつ残さずに治療できる。
 流石に手足飛ばしちまったら、俺もお前もただじゃすまねえだろうけどな』

「わーってるって、心配すんな。うまくするさ」

追跡者は視線の先にいる少年が暗い路地の角を曲がるのを確認すると、能力を使って一気に少年との距離を詰めた。
そうして追跡者が路地の角を曲がろうとした、その時。
そこに積み上げられていた大量の木箱が、追跡者を押し潰さんとして雪崩れ込んできた。

相手は能力が使えないからと高を括って、自分も能力の使用に手を抜いていたのが悪かった。
木箱攻撃をまともに食らってしまった追跡者は木箱の山に埋まってしまい、
ほんの僅かな時間とはいえ完全に少年の姿を見失ってしまう、という致命的なミスを犯した。
追跡者はすぐに木箱の山を蹴散らして少年の姿を探すが、何処をどう見回しても少年の姿を見つけることができない。
追跡者が歯噛みしていると、イヤホンから先程の男の声が聞こえてきた。

『オイ、すごい音がしたぞ。どうかしたか?』

「くそ、油断した。見失っちまった。だがまだそんな遠くへは行ってない筈だ。監視カメラから確認できるか?」

『ちょっと待ってろ。…………』


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