過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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◆uQ8UYhhD6A
[saga]
2011/01/28(金) 02:36:42.01 ID:jMvwQYeBo
美琴に見つかってしまった一方通行は、何とかして彼女から逃げ切る為に全力疾走していた。
やっとのことで追跡者たちを撒いた矢先に、この有様だ。
せっかく今後のことを考えて能力を節約していたのに、今度は美琴を撒く為にまた能力を使うハメになってしまった。
別に彼女が悪いわけではないのだが、今回ばかりはタイミングが悪過ぎるとしか言いようがない。
(つゥか、アイツらこンな時間にあンな場所で何やってンだよ! 明日は学校じゃなかったのか!?)
流石にもう家に帰っているだろうと高を括って油断していた彼にも非はあるのだが、それでも苛ついてしまう彼をどうして責められようか。
何しろ、彼は美琴を撒く為だけに追跡者たちのいる方へと向かって行っているのだ。
彼女を振り切るのに最善のルートとは言え、やはりこの道を通るのには相当の覚悟が要る。
何故なら最悪の場合、あの最初にして最強の追跡者と鉢合わせてしまう可能性があるからだ。
(腹立たしいことに、アイツにだけは未だに勝てる気が全くしねェ。遭遇したら最後だな)
それでも危険なルートを行くのを辞めないのは、ひとえに美琴をこんなことに巻き込みたくないからだ。
事情を知れば、彼女はきっと一方通行のことを助けようとするだろう。
そして、あの追跡者とも戦おうとするに違いない。
だが、彼は美琴では奴に敵わないと確信していた。それほどまでに、あの追跡者の力は圧倒的なのだ。
どうやら奴らは一方通行を生け捕りにしなければならないようなので、少なくとも彼だけは殺されることはないだろうが、
美琴にもそこまでの配慮をしてくれるとは限らない。
一方通行はあの追跡者の人格を知らないが、もし目的の為に手段を選ばないような人物だったならアウトだ。
そう。彼の懸念は、そこだった。
(それにしても、こっちは能力フル活用して走ってるってのにどォしてついて来れるンだ? アイツの身体能力は化け物か)
彼のすぐ後ろには、スポーツ選手も顔負けの見事なフォームで走っている美琴の姿があった。
あれだけ早いと、彼女も自分のように体内の電気信号を操って身体能力を強化しているのではないかと疑いたくなる。
いや、美琴のことなのでもしかしたら本当にやっているのかもしれないが。
(……しかも、上条まで増えてやがる)
追跡者たちは結構派手に暴れているようだから流石に上条は自重するかと思ったのだが、その期待は裏切られてしまったようだった。
拳銃や爆弾といった普通の兵器に対しては無力なくせに、よくもまあここまで首を突っ込めるものだ。
つい先日あれだけ注意したというのに、まったく懲りていないらしい。
自分はその見本として、ついさっき『敵わないと思った相手』から逃走してきたばかりだというのに。
(屋根の上に飛べば撒けるだろォが、目立ち過ぎるからあンまり使いたくねェんだよな。
……まァ、この状況じゃそンなことも言ってられねェか)
先程戦闘になった時は、あの男と距離を取ることを最優先にしていたため已む無く使ってしまった手だが、
少し考えたら分かる通りに、一歩間違えば格好の的にされかねない手段だ。
実際、彼はあれから道に降りるまでの間ずっと砲撃を受け続けていた。
もちろん『反射』をオンにしてあったので彼自身は無傷だが、
砲撃による音や光によって自分の位置を知らせながら逃げているようなものなので、逃走するには恐ろしく非効率的な方法なのだ。
しかし彼は、意を決して夜空へと跳び上がる。
背後で、美琴が息を呑む音が聞こえた。
彼女は一方通行が戦っている姿を見たことが無かったので、まさか彼がここまでの能力を持っているとは思っていなかったのだろう。
そして彼は背の高い建物の屋上に着地すると、自分の後を追う二人には目もくれずに更に向こうの建物へと跳躍した。
彼を追っていた二人の足は、止まってしまっていた。
逃げて行く一方通行の姿を見て、彼女たちがいったい何を思ったのかは定かではない。
ただ、一方通行は振り返らずに走り続けた。
ひたすらひたすら、二人を振り切る為に。
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