過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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556: ◆uQ8UYhhD6A[saga]
2011/02/28(月) 18:29:11.30 ID:eUvk8S8ro

「……キミは、優しいのね」

「はァ?」

藪から棒に、何を言い出すんだこの女は。
その意味不明な発言に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった一方通行は、気まずそうに表情を歪めながらコーヒーを口に運ぶ。

「なァに馬鹿なこと言ってンですかァ? 寝言は寝て言えっての」

「でも素直じゃない、と」

「マジでぶっ飛ばすぞ」

一方通行が低い声でそう脅しても、芳川は穏やかに笑うばかりで全く気にした様子がない。
そこで漸くこの女には何を言ったところで無駄だということに気付いた一方通行は、彼女との会話を諦めた。
この手の馬鹿は無視するに限る。

「キミは信じてくれないかもしれないけれど、これでもわたしは本当に感謝してるのよ?
 あの子たちはキミに出会うまで、友達らしい友達なんていなかったんだから」

「…………」

「これからも、あの子たちをよろしくね。きっとキミは、あの子たちの心の支えになるわ」

聞いていられなくなって、一方通行はコーヒーを一気にあおった。
そして空になったティーカップを少し乱暴に寝台のサイドテーブルに置くと、苦虫を噛み潰したような顔をして芳川から目を逸らした。

「そんなに急いで飲まなくても良かったのに」

「……さっさとやっちまいたいンだよ、こォいうことは。あンまり長居してコイツを起こすのも悪ィだろうが」

「なるほど。そうね、キミの言う通りだわ。それならさっさとやってしまいましょうか」

芳川は促されるままにコーヒーを飲み干すと、彼と同じようにサイドテーブルにティーカップを置いた。
彼女はコーヒーで濡れてしまった唇をハンカチで拭うと、さっそく装置の前に付いてディスプレイを指でなぞりはじめる。

「じゃあ始めるわよ。少し複雑だから、ちゃんと聞いていてね」

「ああ」

「これが診断結果。上から妹達の検体番号(シリアルナンバー)、病名、深刻度、処方する薬品名よ」

「これは?」

「これは脳波と心拍数、体温、血液の状態と以前に処方した薬剤の名称に詳細な健康状態。それからこっちは……」

一方通行は、芳川の指し示した文字と彼女の言葉を一字一句違わずに記憶していく。
どうやらこの装置は本当に詳細な健康状態まで知ることができるようで、診断書の枚数も決して少なくはなかった。
しかし一方通行は、それらをすべて正しく記憶する。彼は決して間違えない。

やがて芳川の説明が終了すると、一方通行は目を閉じて教えられたことを反芻し始める。
芳川はそんな彼を見ながら、小さく安堵の息をついた。無事に説明を終えることができて安心したのだ。

「……診断書の見方はこんなものね。次に、指定された薬品を調合して妹達の体質と体調に合った薬を作るの。
 流石にこれはキミに任せることはできないから、処方箋を指定の部署に提出して薬を貰ってね。部署はこっちよ、ついてきて」

話している内に出力しておいた診断書を揃えると、芳川は席を立った。
一方通行もそれに倣って医務室から立ち去ろうとしたが、ふと白衣に引っ掛かりを感じて立ち止まる。
振り返れば、彼の白衣の裾は未だミサカ10039号に掴まれたままだった。

一方通行は眠っている彼女の指をそっと外してやると、最後にちらりとだけ彼女の顔を覗き込んで今度こそ医務室を立ち去る。
残されたミサカ10039号の寝顔は、とても安らかだった。





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