過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
1- 20
684: ◆uQ8UYhhD6A[saga]
2011/03/21(月) 21:58:52.37 ID:phNmQ4HQo

「そんなことはありません。気が向いたらで構いませんから、どうか他のミサカにも構ってあげて下さい、とミサカは再度お願いします」

「……まァ、本人がそォして欲しいってンならその時に考えてやるよ」

「ありがとうございます。きっと彼女たちも喜ぶはずです、とミサカは一方通行に感謝します」

すると、ミサカ10039号は一方通行に向かってぺこりと頭を下げた。
それを見て何を思ったのか、一方通行は難しい顔をして軽く頭を掻く。

「ったく、分っかンねェなァ……」

「そうですか。ですが、あなたもいい加減こういった感情の機微を理解した方が良いですよ? とミサカは今更ながら助言します」

「……感情の機微、ねェ」

ミサカ10039号の言葉を反芻しながら、一方通行は苦い顔をする。
別にそういったものをまったく理解できない訳ではないのだが、一方通行はとりわけ妹達のことに関しては理解しがたいと思っていた。
ミサカネットワークで御坂妹と記憶を共有しているとは言え、どうしてそこまで自分に執着しているのか。

条件は、上条や美琴と同じだ。
いや、むしろ美琴は妹達のオリジナルで『お姉様』として慕われているのだから、一方通行よりも彼女に執着して然るべきだ。
しかし彼女たちは、ただ手近なところにいると言うだけの理由でひたすら一方通行にだけ構って貰いたがる。
美琴や上条も御坂妹以外に何人かのクローンがいることは知っているのだから、気兼ねなく会いに行くことは出来るはずなのに。
……誰にとは言わないが、気を遣っているのだろうか?

「ともあれ、今日はとても楽しかったです、とミサカは研修に対する感想を述べます」

「そりゃァ良かった」

「はい。本当に良かったです、とミサカは……」

いつもの口癖を途中で止めて、ミサカ10039号はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて俯いた。
……こういう時に掛ける言葉を、一方通行は持っていない。
だから彼は何も言わず、黙ったままのミサカ10039号を見守っていた。

「……あ。研究所に到着してしまいました、とミサカは状況を報告します」

「あァ、そォだな」

「これでミサカの研修も終了ですね、とミサカは名残惜しく思います」

「……そォか」

一方通行とミサカ10039号では、向かうべき棟が違う。
だから二人は、ここで別れなければならなかった。
……別に、ここで別れたからってもう二度と会えなくなるわけではない。明日の仕事で、また顔を合わせることになるだろう。
けれど彼女の研修は、ここで彼と別れてしまった時点で本当に終わりになってしまうのだ。

「それでは一方通行。また明日、とミサカは別れの挨拶をします」

「……あァ。また明日、な」

「はい。さようなら」

ミサカ10039号はそれだけ言うと、駆け足で自分の向かうべき棟へと帰って行った。
まるで、何かを振り切ろうとしているかのように。
一方通行はそんな彼女の後姿を見送りながら、何も言うことができなかった。
……何かを、言うべきだったのではないかと考えながら。





<<前のレス[*]次のレス[#]>>
1002Res/1072.87 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice