過去ログ - 上条「だからお前のことも、絶対に助けに行くよ」一方「……」
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◆uQ8UYhhD6A
[saga]
2011/04/08(金) 21:04:25.53 ID:B//6TTyoo
冥土帰しの言葉を、御坂妹は目を閉じて反芻する。
その結果、彼女がその言葉を解釈したのかは分からない。ただ彼女は不思議な笑顔を浮かべながら、寂しそうに目を伏せた。
「それにしても。……君たちは、いつまでこんなことを続けるつもりだい?」
「……さあ、とミサカは曖昧に言葉を濁します」
「いつまでもこんな不安定な状態が続くと思っている訳でもないだろう。それに、今日の事件は彼と何か関係が?」
「今日の事件は彼には何の関連性もありません、とミサカは断じます。
……ただ彼はあまりにも沢山の人間に興味を持たれていますから、ミサカたちの与り知らぬところで関係している可能性も無きにしも非ずですが」
「そうかい。……まあ、僕がそこまで口を出すことじゃないが」
そこで、冥土帰しは一息置いた。
御坂妹は息を潜めて、彼の次の言葉を待つ。
「ぐだぐだとこんなことを続けている内に、最悪の事態にならないとも限らない。……十分に気を付けておくことだ」
「……肝に銘じておきましょう、とミサカはその言葉を重く受け取ります」
「ああ、是非ともそうしてくれ」
「…………。あなた、は」
突然御坂妹が発した言葉に、冥土帰しは少し意外そうな顔をする。
まさか自分の話題に飛ぶとは思わなかったのだろう。
しかし、彼がそんな顔を見せたのはその一瞬だけ。すぐにいつもと同じ表情に戻り、黙って御坂妹を見つめる。
「あなたは、何を何処まで知っているのですか? とミサカは問い掛けます」
「……さあ、ね。僕は直接の関係者じゃないから、そこまで詳しいことは知らない。
ただ、その概要と……、その渦中にいた君たちが一体どんな気持ちでそこにいたのかを推測しただけさ」
「………………」
「だけど、これだけは言っておく。僕は君たち以上の深い闇を体験してきた。闇の底の底、奈落の果てをね。
だから僕の言うことはきちんと聞いておくんだ。良いね?」
「ええ。……もちろんです、とミサカは改めて了解します」
御坂妹は、その言葉を強く噛み締める。
自分たちがいた場所以上の闇なんて、まるで想像がつかない。本当にそんなものが存在するのかどうかも疑わしい。
けれど冥土帰しは、それが存在すると言った。……存在、するのだ。そういう深淵が。
「……もう良いだろう? そろそろ帰りなさい。研究者さんたちも心配している筈だ」
「はい。……今日は、本当にありがとうございました、とミサカは感謝の意を示します」
そして御坂妹はぺこりと頭を下げると、静かに診察室を後にする。
残されて一人きりになってしまった冥土帰しは、彼女が出て行ってしまった後も、ずっと閉じられた扉を見つめ続けていた。
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