419:投げんな匙 ◆ZBFBxXwTUM[saga]
2011/02/08(火) 11:25:01.15 ID:4/Yp8CWbo
初めてアイテムの報告で死人が出た時、佐天は自分の命令によって人を殺したことに苛(さいな)まれた。
しかし、いまではただの報告書に載る数字の羅列同然と化してしまった。
彼女にとっては命の重みは等しい訳ではないのだった。
そんな環境に慣れてしまった彼女であったが、死んでしまった人たちに謝罪の意志も込めて、金の一部を親に送金している。
それは佐天が自分なりに考えた謝罪の気持ちの表れなのかもしれない。
しかし、謝罪といっても暗部の戦いで亡くなった人の遺族に送金するのが妥当であるが、彼女にそこまでする勇気は無かった。
恐かったのだ。
遺族から何かしら言われることが。
しかし、一番彼女が恐れていたこと…。
それは…いつか治安維持機関から自分に仕事が宛がわれなくなり、いつもの何もない、無能力者としての生活に戻ることだったのだ。
友人は居る。交友関係にも表面上は何も起きていない。
ただ、彼女は今の環境が変わることに恐れていた。
………。
考え事をしつつ彼女はうとうとと寝てしまっていた。
「佐天さん〜?すいませんー!起きて下さいー!」
「はっ!ごめん、初春!」
「いきなり謝ってどうしたんですか?嫌な夢でも?」
初春はその優しい表情を佐天に向ける。
どっぷりと嫌な事を考えていた佐天は「いや、ごめんなんもない」と言って初春を見る。
彼女の屈託のない笑顔が佐天にとってはやけにまぶしくかった。
初春の掛け声で不意に佐天は我に帰ると、学習机にある小さい時計をちらと見る。
最終下校時刻まであと少しだった。
「ごめん、考え事して寝ちゃってたわ」
「宿題から逃避するんじゃなくて、しっかり取り組みましょうね。じゃ、最終下校時刻が近くづいてるんでもう帰りますね?」
そういうと初春は玄関に向かう。
彼女はローファーをひょいと履き、佐天の家を出る。
佐天はひょこひょこ歩いて行く彼女に手を振る。
「まったねぇ〜!初春ぅ〜!」
「そんなおっきぃ声出さないでださぃ〜!!恥ずかしいですよ〜!」
佐天は真っ赤な夕焼けの光に初春がまるで溶けて見えなくなるまで手を振り続けた。
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