28:たけし君と僕。(2/3)[sage]
2011/01/21(金) 23:08:37.80 ID:sfhia2bno
「……あのころは若かったなあ」
机の引き出しから出てきたものを見つめ、僕は一人ごちた。
あれは、思い出すだけで顔が赤くなる、だけど何よりも大事な思い出だ。
ケンカなんてしたこともない僕が、初めて他人を殴った日。
「おい、片付けもしないで何を見てるんだ……って、ヨーヨー?」
「ああ、思い出の品ってやつだよ。分かる?」
質問に質問で返す、僕は少し意地悪だったかもしれない。
だけど。
「懐かしいな。これって確か、お前と初めてケンカしたときのヨーヨーだろ?
今までずっと持ってたなんて物持ちいいな、お前」
あっさりと答えられて、びっくりした。
僕にとっては思い出の品でも、この人にとっては大した物じゃない。
そう思ってた。
「なんで憶えてるの?」
「なんでって聞かれてもな……そう言うってことは、お前だって憶えてたんだろ?」
「そりゃまあね、初めて君を――その、叩いた日だし」
ちょっと口籠もったのは、もう少し柔らかい表現をしたかったからだけど。
あいにくと僕のボキャブラリーじゃ難しかったので、仕方なく無愛想に答える。
「だからだよ」
でも、そんな僕よりぶっきらぼうに答える彼は、困ったような顔で。
「お前と初めてケンカした日のことだから、憶えてるんだよ。ずっと」
とても、恥ずかしいことをのたまった。
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