816:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(新鯖です)[saga]
2011/11/15(火) 15:33:53.21 ID:zRbR25Mco
ぼくは石をかるく上になげました。
「そうだね。星たちもある日そういうふうに空にのぼる。だれにも見られないようこっそりとね。それから空の空気をすって光り出すんだ」
ぼくは感心しました。星はそうやって今見ているような星になるんだ、と。
今も北で生まれているのかもしれないなと思って北のほうをながめます。
「そうだな。今夜も星になったやつがいるかもなあ」
またながれ星が走りました。ぼくはぼーっとそれを見ていました。
と。そこで気付いて彼に聞きました。
「じゃあ、星は死にもするんですか?」
彼がすこしだまって、それからゆっくりうなずきました。
「ああ、死にもするよ」
「死んだ星はどうなるんです?」
彼は前足を持ち上げて指さします。空。そしてながれる星。
ぼくは分からず首をかしげました。
「星は、ながれ星になって死をむかえるんだ」
ぼくはまたびっくりして彼を見つめました。
「ながれ星になったら、死んじゃうんですか?」
「彼らは光る星になって空で長いあいだかがやきつづける。でも、それが終わるとながれ星になるんだ。それが最後」
また、星がひとつながれました。
ぼくはとつぜん悲しくなって立ちあがりました。空を見あげ、でもどうしようもなくて。
「泣かなくていい。それが彼らの生き方だ」
「でも」
彼はすわったままぼくを見あげて笑いました。
「死ぬ、と考えるから悲しくなる。ちがうよ。彼らは遊びにいくんだ」
ぼくはわからなくなって、たちすくみました。
「死んだら、そこで終わりじゃないんですか?」
「星はね。長く長く光りつづけるんだ。それこそたいくつでしかたなくなってしまうくらいね。だから、彼らもがまんできなくなったら遊びにいく」
「どこに?」
「それはわたしもしらない。でもながれ星になるくらいいそいでいるんだ。とってもいいところにちがいない」
「天国?」
「どうだろうね」
彼は言って、立ちあがりました。
「わたしはこれで帰るよ。君と話ができてよかった」
そのままゆっくりと丘をおりていきました。
この手紙が書きあがったらぼくはちょっと出かけます。
どこかは書きませんが、北のほうです。星の生まれるところを見てきます。
寒いだろうからたくさん服を持っていこうと思います。
帰ってくるのはいつごろになるかな。帰ってきたら、また彼と話がしたいな。
じゃあ、いってきます。
大好きなママへ。
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